衣類型ウェアラブルデバイスで自律神経活動を24時間記録、アプリで食事や症状を同時に記録
大阪公立大学は12月22日、IBS患者と健常者を対象に、ウェアラブルデバイスを用いて自律神経活動を記録するとともに、排便や睡眠などの生活イベントを独自開発したスマートフォンアプリで記録した結果、過敏性腸症候群(IBS; irritable bowel syndrome)患者は、交感神経活動が排便2分前から活性化し、排便9分後まで持続していることを見出したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科 消化器内科学の田中史生准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「PLOS ONE」にオンライン掲載されている。
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IBSは排便に関連した腹痛が慢性的に存在している病気であり、生活の質の低下が社会的な問題となっている。IBSの病態に自律神経の異常が関係しているとの既報があるが、心電図検査を利用しているため24時間での測定結果に基づく評価を行っているものが多く、排便時の変化を調べた既報はなかった。
そこで研究グループは今回、IBS患者6人と健常者14人を対象として、東レ株式会社と日本電信電話株式会社が開発した機能素材「hitoe(R)」を用いた衣類型のウェアラブルデバイスで自律神経活動を24時間記録し、独自開発したスマートフォンアプリで、排便や食事、睡眠などの生活イベントおよび腹部症状を同時に記録した。
IBSでは排便2分前から交感神経活動が活性化し、排便9分後まで持続
その結果、IBS患者では排便2分前から交感神経活動が活性化し、排便9分後まで持続していることが判明。さらに、交感神経活動の活性化は、腹痛の強さや生活の質の低下と関連していることも明らかとなった。
現時点では交感神経の活性化が、その後の腹痛を予知できるものか、あるいは逆に腹痛があるから交感神経が活性化しているのかが未解明だが、交感神経が排便前後の病態に関与していることが明らかとなった。
ウェアラブルデバイスの装着で発症前にトイレに行くなどの対応が可能となる可能性
今回の研究成果が、IBSのさらなる病態解明につながることが期待される。研究グループは、交感神経の活性化がその後の腹痛を予知できるものなのか、逆に腹痛があるから交感神経が活性化しているのかを解明すべく、今後研究を進めたいとしている。
腹痛を予知できるのであれば、ウェアラブルデバイスをあらかじめ装着しておくことにより、事前にトイレに行っておくなど、発症前に対応できる可能性がある。また、交感神経の活性化を抑えることが治療につながるか否かについても今後の検討が必要と考えられる。
「本研究は、衣類型のウェアラブルデバイスを用いた自律神経機能の測定と、独自開発したスマートフォンアプリを用いた排便などの生活イベント・腹部症状の同時リアルタイム入力により、排便時の自律神経機能を正確に評価できる点が斬新だ」と、研究グループは述べている。
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