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統合失調症の脳内活動パターンから意味関係が乱れる仕組みを明らかに-東京医歯大ほか

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2022年12月22日 AM10:48

統合失調症における「」、脳活動から直接は捉えられなかった

東京医科歯科大学は12月21日、機能的磁気共鳴画像()とAI技術を使って、さまざまなものの意味を表す脳活動パターンを解析し、統合失調症患者の脳内において、意味関係の乱れが生じていることを発見したと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科精神行動医科学分野の高橋英彦教授、松本有紀子助教、(NICT)の西田知史主任研究員、産業技術総合研究所の林隆介主任研究員、大阪大学大学院生命機能研究科の西本伸志教授、京都大学大学院医学研究科脳病態生理学講座の村井俊哉教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Schizophrenia Bulletin」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

統合失調症は、思春期から30歳くらいまでに100人に1人が発症し、幻覚、妄想などの症状をきたす病気である。統合失調症患者の会話は、しばしば内容がまとまらず、支離滅裂になることがあるが、精神医学の大家であるブロイラーは、この症状を「連合弛緩」と名付け、以来1世紀以上もの間、統合失調症の最も根本的な症状として重要視されてきた。連合弛緩とは、言葉の意味関係が乱れている症状を指す。このような症状は、統合失調症の脳における機能的な接続の異常と関連すると考えられてきたが、これまで「意味関係の乱れ」を脳活動から直接捉えることはできなかった。

患者の脳活動をfMRIで計測し、脳活動に基づく脳内意味ネットワークを構築・解析

そこで研究グループは、統合失調症患者の脳活動をfMRIで計測し、さまざまなものの意味を表す脳活動パターンを明らかにした。そして、fMRIデータに基づく関係性から、「脳内意味ネットワーク」を構築した。意味ネットワークは従来、心理学や人工知能の分野において人間の知識や自然言語における意味関係を表すために用いられてきたデータ解析の枠組みで、一つ一つの言葉の意味を頂点、それらの関係性を辺として表すグラフ構造になっている。ネットワーク上の2つの頂点が少ない中継点を介して簡単につながることができる性質は「スモールワールド性」と呼ばれ、情報が効率的に伝達されやすいことを表している。私たちが日常的に使う言語もこのスモールワールドの性質を持つことが知られている。今回の研究ではスモールワールド性に焦点を当て、統合失調症患者と健常者との間の脳内意味ネットワークの構造の違いを通じて、連合弛緩(=意味関係の乱れ)を世界で初めて脳活動に基づいて検証した。

動画を見たときの脳活動で解析、患者は脳内意味ネットワーク内部構造が無秩序

統合失調症患者と健常者がさまざまな動画を見ているときの脳活動をfMRIで測定し、動画に出現するものの単語リストと脳活動データから、個々の単語の意味に対応する脳活動パターン(脳内意味表現)を、符号化モデリングと自然言語処理アルゴリズムと呼ばれるAI技術を用いて推定した。次に、得られた脳内意味表現の類似性に基づき「脳内意味ネットワーク」を構築し、多数の単語の意味関係をネットワーク解析により評価した。

その結果、統合失調症患者の脳内意味ネットワークでは、代表的なネットワーク指標であるスモールワールド性は減少しており、健常者よりもネットワーク構造が無秩序になっていることが明らかになった。スモールワールド性は妄想の心理指標であるPDI得点と負の相関があり、脳内意味ネットワークの無秩序化は思考障害と関連することも示された。

さらに、患者の脳内意味ネットワークは、「生き物」や「人工物」といった大まかなカテゴリにはっきりと区分される傾向(モジュール性)が高い反面、各カテゴリの内部構造は無秩序化していた。つまり、患者の脳内意味表現は完全に無秩序化しているのではなく、大まかなカテゴリ構造は保持されていることが明らかになった。

精神疾患患者の主観的な体験様式を、脳活動から直接評価可能

統合失調症の最も基本的な症状である「連合弛緩」は、その科学的根拠の解明が長らく待たれてきた。今回の研究により、統合失調症患者の脳内意味ネットワークが無秩序化しているということがわかり、脳活動パターンにも連合弛緩が表れていることが世界で初めて明らかになった。統合失調症患者ではこのような脳内での意味関係の乱れがあるために、妄想や会話の脱線などの思考障害が生じると考えられる。「本研究は、精神疾患患者が知覚している主観的な体験様式を、思考障害のある本人に話してもらうことなく、脳活動から直接評価できる点で、精神医学の診断、治療に新たな可能性をひらくものと考えられる。さらには、認知神経科学、神経画像、言語処理などの研究領域において、脳内の知識体系の理解に寄与することが期待される。」と、研究グループは述べている。

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