適度な運動をしている乳がんサバイバーは生存率が高い
早期乳がんと診断された後に運動を習慣的に行っている人はそうでない人よりも、死亡リスクが有意に低いというデータが報告された。米カイザーパーマネンテ南カリフォルニア病院のReina Haque氏らの研究によるもので、結果は「JAMA Network Open」に11月17日、レターとして掲載された。
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習慣的な運動を行っている人の乳がん発症リスクが低いことは既に知られている。しかし、乳がんと診断された後の運動習慣と予後との関連については、ほとんど報告がなかった。Haque氏らの研究によって、乳がん診断後の習慣的な運動が、全死亡(あらゆる原因による死亡)リスクを低下させる可能性のあることが分かった。また、中程度の運動量でも、それより多く運動した場合と全死亡リスクは変わらないことも明らかになった。
この研究の対象は、1996~2012年に、初期の乳がん(ステージ0~2)と診断され、その後2年以上経過(中央値6年)した時点で生存していた女性315人〔平均年齢71歳(範囲57~80〕)を、2013年8月~2015年3月に登録。2022年4月末の追跡期間終了、または死亡が確認されるまで追跡。登録時に行っていたアンケート調査から把握した日常の運動量と死亡リスクとの関連を検討した。運動量は、ジョギングやランニングなどを高強度(9点)、早歩きやサイクリングを中強度(5点)、それ以下の運動を軽強度(3点)とし、それらの実施頻度と点数を掛け合わせ、合計した点数を基に3群に分類した。
中央値7.8年(四分位範囲7.3~8.3)の追跡で、乳がんによる死亡5人を含め、計45人が死亡した。年齢、人種/民族、乳がんのステージ、治療法、乳がん診断からの経過年数、チャールソン併存疾患指数などを調整後に、運動量が最も少ない群(97人)を基準として死亡リスクを比較検討。その結果、運動量が最も多い群(141人)は58%有意に低リスクであり〔ハザード比(HR)0.42(95%信頼区間0.21~0.85)〕、運動量が中程度の群(77人)は60%有意に低リスクだった〔HR0.40(同0.17~0.95)〕。
この結果をHaque氏は、「乳がん診断後に適度な運動を行うことで、生存率の点でメリットを得られることを示唆するものであり、良いニュースだ」としている。同氏はまた、「適度な運動には、血圧、血糖値、体重のコントロールなど、多くの健康上の利点がある。われわれの研究から、乳がんと診断された後にも、運動の恩恵を受けられることが示された」と語っている。
乳がんは、早期に発見された場合は治癒する確率が高く、米国がん協会(ACS)によると、がんが乳房内に限局している患者の99%が5年後も生存しているという。ACSのErika Rees-Punia氏は、「乳がんサバイバーに対しても、一般の人と同じように習慣的な運動が奨励されるが、運動が寿命を延ばすのに役立つかどうかという点のエビデンスはほとんどなかった」と解説。今回の報告については、「この研究は、運動が乳がん診断後の予後を改善する可能性があるという、われわれが期待していたデータを良い具合に説明してくれた」と評している。
Haque氏とRees-Punia氏はともに、「習慣的な運動の持つ健康上のメリットについては議論の余地がない」と強調。ただしRees-Punia氏は今回の研究の限界点として、「乳がんと診断される以前に習慣的に運動をしていなかった女性が、乳がん診断後に運動を開始した場合にも、寿命延伸効果が発揮されるのかという点は検討できていない」と述べている。
▼外部リンク
・Association of Physical Activity With Risk of Mortality Among Breast Cancer Survivors
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