DT実施施設は全国で7施設のみ、広く患者を受け入れることは不可能
国立循環器病研究センター(国循)は12月16日、防災ヘリコプター搬送で「Destination Therapy(DT)」候補となる重症心不全症例を受け入れたことと、その経緯について発表した。
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従来、心臓移植の適応となる患者しか治療の対象とならなかった「植込型補助人工心臓(LVAD)」だが、2021年5月より、年齢や心臓以外の疾患で心臓移植の適応とならない重症心不全患者にも装着することが可能となり、生命予後や生活の質の改善が期待できるようになった(この移植を前提としないLVAD治療がDTにあたる)。
国循では2022年11月現在、日本最多の12人の患者にDTを実施しており、良好な治療成績を収めている。しかし、DT実施施設は全国でまだ7施設しかなく、あらゆる地域の患者を容易に受け入れることはできない。
DT実施施設のない遠方から防災ヘリコプターによる搬送で受け入れ、術後経過良好
国循は今回、東海地方に入院中だった重症心不全患者(60代後半の男性)を防災ヘリコプターによる搬送で受け入れた。同患者は点滴での強心薬投与を必要とする重症心不全だが、年齢の規定により心臓移植の適応にはならなかった。治療選択肢としてDTでのLVAD治療の説明を受け、本人および家族がこれを希望した。
しかし、東海地方にはDT実施施設がなく、患者は国循での治療を希望。遠方であることから、防災ヘリコプターによる搬送での転院となった。精密検査後にDT治療としてのLVAD装着手術を実施し、術後経過良好だという。
防災ヘリの使用で患者の身体的負担を最小限に、広域医療連携の定着は今後の課題
一般的に、心臓の機能が著しく低下した状態の不安定な患者では、救急車による長時間の転院搬送により心不全が増悪するリスクは高くなる。今回、防災ヘリコプターによる搬送を行ったことで搬送時間を1時間以内に大幅短縮することができ、患者の身体的負担を最小限にすることで、安全に転院受け入れを行うことができたとしている。
今回、広域での医療連携が患者救命の可能性に重要な役割を果たした。末期重症心不全患者へのLVAD治療は非常に有効な治療だが、それを実施できる施設は限られている。国循は「今後DT実施施設は拡大される見込みだが、今回の広域医療連携の経験をもとに、多くの施設と連携しながら治療を実施し、定着させていくことも今後の課題と考えている」と、述べている。
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・国立循環器病研究センター プレスリリース