パンデミック初期株をもとに作られたmRNAワクチンの有効性を検証
東京大学医科学研究所は12月16日、ワクチン被接種者あるいはブレイクスルー感染者血漿の臨床検体から分離した新型コロナウイルス・オミクロン株のBQ.1.1系統とXBB系統に対する反応性を検証した結果を発表した。この研究は、同研究所ウイルス感染部門の河岡義裕特任教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Lancet Infectious Diseases」オンライン版に掲載されている。
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新型コロナウイルス変異株・オミクロン株の流行は、現在も続いている。オミクロン株は、主に5つの系統(BA.1、BA.2、BA.3、BA.4、BA.5)に分類され、2022年12月現在、日本を含む多くの国々では、BA.5系統に属する株が主流となっている。しかし、米国をはじめとする欧米諸国では、BA.5系統から派生したBQ.1.1系統が主流となりつつある。また、インドやシンガポールなどのアジア諸国では、BA.2系統から派生したXBB系統の感染例も急激に増加している。さらには、BQ.1.1系統とXBB系統が、国内を含む多くの国々で検出されている。
多くの系統が出現し、国民のおよそ65%あるいは40%がmRNAワクチンの3回目あるいは4回目接種を終えている中、現在流行中の系統に対するワクチンの有効性に関する情報が求められている。そこで研究グループは今回、オミクロン株BQ.1.1系統とXBB系統に対するmRNAワクチン(パンデミック初期株をもとに作られたワクチン)の有効性を検証するため、患者から分離したBQ.1.1系統とXBB系統に対するmRNAワクチン被接種者血漿の中和活性を調べた。
ワクチン被接種者のBQ.1.1/XBBに対する中和活性、従来株/BA.2/BA.5より「低」
mRNAワクチン被接種者から採取された血漿のBQ.1.1株とXBB株に対する感染阻害効果(中和活性)を調べた結果、mRNAワクチン3回目の被接種者の血漿(3回目接種から半年経過したもの)または4回目の被接種者血漿(4回目接種から1~2か月経過したもの)の、BQ.1.1系統とXBB系統に対する中和活性は、いずれも、従来株、BA.2系統、あるいはBA.5系統に対する活性より著しく低く、多くの検体で中和活性が検出限界以下だった。
ブレイクスルー感染者のBQ.1.1/XBBに対する中和活性、従来株/BA.2/BA.5より「低」
続いて、mRNAワクチンを3回目接種後にBA.2系統に感染した患者(BA.2系統ブレイクスルー感染者)の血漿を用いて、BQ.1.1株とXBB株に対する中和活性を調べた。これらの血漿のBQ.1.1系統とXBB系統に対する中和活性は、従来株、BA.2系統、あるいはBA.5系統に対する活性よりも顕著に低いことがわかった。しかし、ほとんどの血漿は低いながらも中和活性を有していることが判明した。
治療薬選択や感染症対策計画の策定・実施に役立つ知見
今回の研究を通して得られた成果は、医療現場における適切なCOVID-19治療薬の選択に役立つだけでなく、オミクロン株各系統のリスク評価など、行政機関が今後の新型コロナウイルス感染症対策計画を策定・実施する上で、重要な情報となる、と研究グループは述べている。
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