2000年までの検討では、慢性糸球体腎炎は減少・糖尿病性腎症は急速に増加
新潟大学は12月14日、2006~2020年までの透析導入率を、原疾患別に年齢調整をして経年変化を評価した結果、糖尿病性腎症による透析導入率は低下し、腎硬化症は増加していることなどが明らかになったと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科臓器連関学講座の若杉三奈子特任准教授らのグループによるもの。研究成果は、「Nephrology(Carlton)」に掲載されている。
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日本の透析患者数は年々増加し、2020年末時点で34万人を超えている。そして、2020年には、1年間で4万人を超える慢性腎不全患者が新たに透析に導入されている(日本透析医学会調査)。近年、日本の透析導入率は高齢男性を除いて低下傾向にあるが、人口高齢化の影響を受けて、透析導入患者数は増加が続いている。CKD重症化予防を徹底し、新規透析導入患者数の減少を達成するために、原疾患別に、その透析導入率を詳細に検討することで、より効果的な対策につながることが期待される。
1983~2000年までの検討では、年齢調整した透析導入率は、慢性糸球体腎炎は減少し糖尿病性腎症は急速に増加していたが、それ以降の検討はなかった。そこで研究グループは今回、2006~2020年の日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況」と国勢調査を用いて、日本の一般住民(20歳以上)に占める原疾患別の透析導入率を男女別に評価した。年齢調整は、世界人口を標準人口とした直接法で年齢調整し、joinpoint分析で経年変化を評価した。各年齢階級別の経年変化も評価した。
年齢調整した透析導入率は、慢性糸球体腎炎と糖尿病性腎症で低下
透析導入患者数の変化は、2006~2020年の間に、慢性糸球体腎炎による透析導入患者数は男女とも減少(男性 32%減少、女性 40%減少)していた。糖尿病性腎症による透析導入患者数は、男性で15%増加、女性で16%減少していた。腎硬化症による透析導入患者数は、男女とも増加(男性 132%増加、女性 62%増加)していた。
次に、年齢調整した透析導入率で見ると、慢性糸球体腎炎は男女とも有意に減少(平均年変化率は男性 -4.4%、女性 -5.1%)、糖尿病性腎症は男女とも有意に減少(平均年変化率は男性 -0.6%、女性 -2.8%)、腎硬化症は男女とも有意に増加(平均年変化率は男性 3.3%、女性 1.4%)していた。
腎硬化症は男女で増加、男性では全年齢階級で腎硬化症による透析導入率増加
最後に、男女別・年齢階級別の透析導入率で見ると、慢性糸球体腎炎は男女とも全年齢階級で低下、糖尿病性腎症は男性85歳以上のみ増加、それ以外は低下ないしで平坦化、腎硬化症は男性は全年齢階級で有意に増加、女性は40~59歳、60~74歳で有意に増加。男性は、最も若い年齢階級(20~39歳)でも、有意な増加を認めた(平均年変化率は 4.6%(95%信頼区間 2.4-7.0))。
糖尿病性腎症による透析導入率は減少、増加を続ける腎硬化症に対する対策が急務
今回の研究により、以前は急速に上昇と報告されていた「糖尿病性腎症による透析導入率」が、減少に転じていることが明らかにされた。年齢階級別の検討でも、男性85歳以上を除いて低下ないし平坦化しており、これは、日本における糖尿病性腎症に対するさまざまな施策の効果が現れてきている可能性があるという。一方、腎硬化症による透析導入率は、以前の報告と同様に年齢調整をしても上昇しており、その増加は高齢化の影響だけではないことが明らかになった。
「男女とも、腎硬化症による透析導入率の有意な増加を認め、男性では全年齢階級で、特に若い年齢階級(20~39歳)でも有意な増加を認めたことは注目すべき所見だ。CKD重症化予防を徹底し、新規透析導入患者数の減少を達成するためには、この増え続ける腎硬化症に対する対策が急務と考えられる」と、研究グループは述べている。
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