成人患者約94万人データ、従来株・アルファ株・デルタ株流行期で分析
浜松医科大学は12月13日、レセプト情報・特定健診等情報データベース(National Data Base:NDB)を用いた大規模調査により、パンデミック初期からデルタ株流行期までの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の臨床像や死亡率、死亡リスク因子の推移をはじめて明らかにしたと発表した。この研究は、同大内科学第二講座の宮下晃一医師、穗積宏尚特任助教、須田隆文教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Emerging Microbes & Infections」に掲載されている。
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2019年に初めて報告されたCOVID-19は、その後全世界に広がり、現在もなお大きな社会問題になっている。ウイルス変異やワクチン普及、治療の開発、政策などによりCOVID-19を取り巻く状況は大きく変化しているが、本疾病の理解や対策の向上のためにも、パンデミック初期以降にCOVID-19患者の臨床像や死亡率がどのように変化しているのかを明らかにする大規模な調査が求められている。
NDBは、2009年以降、毎年約18億件のレセプト情報が新たに格納され、2021年12月時点で225億件の入院・外来のレセプト情報(日本のレセプト情報の約99%)を含む世界大規模の医療データベースだ。NDBには各患者の年齢、性別、病名、処方された薬剤、保険収載されている処置、死亡に関する情報が含まれており、厚生労働省の許可を得ることにより、大規模な匿名化データの研究利用が可能となっている。そこで研究グループは、NDBに格納されたビックデータを用いて、パンデミック初期からデルタ株流行期までのCOVID-19患者の臨床像や死亡率、死亡のリスク因子がどのように変化しているのかを明らかにするために、研究を行った。
今回の研究では、2020年1月~2021年8月にCOVID-19と診断された成人患者約94万人の匿名化データをNDBから抽出。そして、患者の診断時期を従来株流行期(2020/1/1~2021/4/18)、アルファ株流行期(2021/4/19~7/18)、デルタ株流行期(2021/7/19~8/31)に分け、年齢や性別、併存症、治療内容、死亡率を調査し、死亡リスク因子の解析については多変量ロジスティックモデルを用いた。
デルタ株流行期はそれ以前に比べ患者が若年化、死亡率が低下
解析の結果、COVID-19患者はデルタ株流行期ではそれ以前の流行期と比較して若年化し、併存症を有する患者の割合が低下していた。死亡率は大きく低下し(従来株流行期:2.9%、アルファ株流行期:2.2%、デルタ株流行期:0.4%)、年齢階層別の検討では、65歳以上の死亡率低下が顕著だった。
高齢・男性・併存症有は、どの流行期でも一貫して死亡リスク上昇と関連
高齢や男性、悪性腫瘍、腎疾患、うっ血性心不全、慢性閉塞性肺疾患、片麻痺、転移性固形がんなどの併存症を有することは、いずれの流行期においても一貫して死亡リスク上昇と関連していることがわかった。しかし、肝疾患など一部の併存症は流行期によってリスクが変動していた。
COVID-19の疫学理解や施策への活用に期待
今回の研究により、パンデミック初期からデルタ株流行期までにCOVID-19患者は若年化し、死亡率が大きく減少していることがわかった。また、いずれの流行期においても一貫して死亡リスクが高い一群があることがわかった。同研究の結果は、COVID-19の疫学理解や施策への活用が期待される。また、NDBにはビックデータが継続的に収集されているため、同研究の手法を用いることにより、オミクロン株流行期以降においてもこのような大規模な疫学調査が可能になる、と研究グループは述べている。
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