CBTプログラム「勇者の旅」、一定の効果を有するも、長すぎるという問題
千葉大学は12月9日、子どもたちが抱える不安の問題を予防するための認知行動療法(CBT)プログラム「勇者の旅」の短縮版について、小学校の子どもを対象に効果検証を行った結果、不安軽減効果を確認したと発表した。この研究は、同大子どものこころの発達教育研究センターの浦尾悠子特任講師、同大大学院医学研究院認知行動生理学の吉田理子非常勤講師、同清水栄司教授、慶應義塾大学の佐藤泰憲准教授の研究グループによるもの。研究成果は、「BMC Psychiatry」に掲載されている。
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不安症(不安障害)は、子どもにも一般的にみられる精神疾患。子どもの不安の問題は自尊心に悪影響を及ぼし、学業成績の不振につながる場合がある。また、社会と関わることを避けたり、友だちとの関係づくりが難しくなったり、学校を欠席しがちになる子どももいる。
研究グループは2014年、子どもを対象としたCBTに基づく予防介入プログラムである「勇者の旅」を開発し、学校現場に導入した。このプログラムには一定の効果があるものの、1セッションに45分間かかる上、すべてのプログラムを終了するまでに10週間かかる。通常の授業カリキュラムをこなすことも大変な日本の学校現場で、予防プログラムのために授業時間を割くことは非常に難しいという問題があった。そこで、研究グループは、学校現場に導入しやすいよう、朝学活などの短時間でも実施可能な短縮版「勇者の旅」プログラムの効果検証に着手した。
1セッションあたりの時間を短縮、朝学活の時間帯にプログラムを実施
研究グループは、20分間のセッションを週1回、計14週間で終了する構成とし、小学校に通う5年生(10~11歳)の子ども90人を対象に、朝学活の時間帯にプログラムを実施した。子どもたちは「勇者の旅」プログラムを受ける介入群と、受けないコントロール群とに分けられた。プログラム実施前と実施後、そしてプログラムを受けてから2か月後に、子どもたちにアンケートを行って、不安症状や行動問題の度合いを評価した。子どもの不安症状は「スペンス児童用不安尺度(SCAS)」を、行動問題は「子どもの強さと困難さアンケート(SDQ)」を使用して測定した。
介入群の子どもの不安症状が有意に減少
2か月の追跡調査の結果、介入群の子どもの不安症状が、コントロール群に比べ、統計的に有意に減少していることが確認された。また、行動問題においても同様の傾向を認めた。これは、「勇者の旅」プログラムが短縮され実施された場合でも、先行研究と同様に効果があることを示唆している。
「日本の小学校高学年を対象としたCBTベースの不安予防プログラム「勇者の旅」の有効性は、これまでの研究でも確認されていた。今回、短縮版の効果も確認できたことから、今後は、より多くの学校へ導入され、たくさんの子どもが「勇者の旅」プログラムを受けることで、不安障害の軽減に寄与することが期待される」と、研究グループは述べている。
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