欧米諸国でBQ.1.1系統、アジア諸国でXBB系統が流行中
東京大学医科学研究所は12月8日、臨床検体から分離した新型コロナウイルス・オミクロン株のBQ.1.1系統とXBB系統に対する治療薬の効果を検証した結果を発表した。この研究は、同研究所ウイルス感染部門の河岡義裕特任教授ら、東京大学、国立国際医療研究センター、国立感染症研究所、米国ウィスコンシン大学の研究グループによるもの。研究成果は、「New England Journal of Medicine」オンライン版に掲載されている。
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新型コロナウイルス変異株・オミクロン株の流行は、現在も続いている。オミクロン株は、主に5つの系統(BA.1、BA.2、BA.3、BA.4、BA.5)に分類される。2022年11月現在、日本を含む多くの国々で、BA.5系統に属する株が主流となっている。しかし、米国をはじめとする欧米諸国では、BA.5系統から派生したBQ.1.1系統の感染例が増加。また、インドやシンガポールなどのアジア諸国では、BA.2系統から派生したXBB系統の感染例も急激に増加している。さらに、BQ.1.1系統とXBB系統が、国内を含む多くの国々で検出されている。
臨床検体から分離のウイルスで、国内承認の抗体薬と抗ウイルス薬の効果を検証
国内では、3種類の抗体薬(カシリビマブ・イムデビマブ、ソトロビマブ、チキサゲビマブ・シルガビマブ)と3種類の抗ウイルス薬(レムデシビル、モルヌピラビル、ニルマトレルビル・リトナビル)が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する治療薬として承認を受けている。しかし、これらの治療薬がオミクロン株のBQ.1.1系統とXBB系統に対して有効かどうかについては、明らかにされていない。そこで、今回研究グループは、患者から分離したBQ.1.1株とXBB株に対する治療薬の効果を調べた。
抗体薬、BQ.1.1系統とXBB系統への中和活性が著しく低い
はじめに、BQ.1.1株とXBB株に対する4種類の抗体薬(ソトロビマブ、ベブテロビマブ、カシリビマブ・イムデビマブ、チキサゲビマブ・シルガビマブ)の感染阻害効果(中和活性を調べた。その結果、BQ.1.1系統とXBB系統に対するソトロビマブ、カシリビマブ・イムデビマブ、チキサゲビマブ・シルガビマブの中和活性は、いずれも著しく低いことが判明。さらに、4種類の抗体薬の中で、BA.2系統とBA.5系統に対して高い中和活性を維持していたベブテロビマブも、BQ.1.1とXBBの両系統に対する活性が著しく低いことが判明した。
抗ウイルス薬、従来株に対する増殖抑制効果と同程度
続いて、3種類の抗ウイルス薬(レムデシビル、モルヌピラビル、ニルマトレルビル)の効果を解析。その結果、全ての薬剤がBQ.1.1株とXBB株に対して高い増殖抑制効果を示した。また、それらの抑制効果は、従来株に対するそれと同程度であることが判明したという。
同研究を通して得られた成果は、医療現場における適切なCOVID-19治療薬の選択に役立つだけでなく、オミクロン株各系統のリスク評価など、行政機関が今後の新型コロナウイルス感染症対策計画を策定・実施する上で重要な情報となる、と研究グループは述べている。
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