指定難病、眼のTTR標的の新規治療薬の開発が急務
富山大学は12月7日、アミロイド病の新たな低分子医薬品へと応用可能な化合物として、新規フラバノン誘導体の創製に成功したと発表した。この研究は、同大学術研究部工学系生体機能性分子工学研究室の豊岡尚樹教授、岡田卓哉助教、同大学の薬学・和漢系構造生物学研究室の水口峰之教授、横山武司助教らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Medicinal Chemistry」オンライン版に掲載されている。
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トランスサイレチン(TTR)は主に肝臓で合成される4量体タンパク質であり、チロキシンやレチノールの輸送を担っている。通常、TTRは安定したタンパク質だが、特定の条件下あるいは遺伝的要因によって4量体が単量体へと解離・凝集すると、不溶性アミロイド線維が形成される。それが心臓・眼・末梢神経などに沈着すると重篤な機能障害を引き起こす。これはアミロイド病と呼ばれ、難病に指定されている。
同疾患の治療法としては肝移植が有効ではあるものの、ドナー不足や移植後の緑内障や硝子体混濁などによる視力の低下が大きな問題となっている。現在、有効な低分子医薬品としてはタファミジス(ビンダケル(R))が報告されているものの、眼アミロイドーシスには一定の効果を示さないため、眼のTTRを標的とした新たな治療薬の開発が急務となっている。そこで研究グループは今回、アミロイド線維形成阻害効果が報告されているナリンゲニン(IC50値12µM)をベースとした、新規フラバノン誘導体の創製を試みた。
合成した新規フラバノン誘導体6のアミロイド線維形成阻害効果、タファミジスと同程度
合成した新規フラバノン誘導体の中で、化合物6(IC50値3.7µM)は既存のアミロイド病治療薬であるタファミジス(IC50値5.5µM)と同程度のアミロイド線維形成阻害効果を示すことを見出した。
化合物6は、B環上に2つの塩素原子を持つが、フラバノン骨格B環上に導入する塩素原子の数によって、TTRと化合物との結合様式が大きく異なることが示された。また、合成した化合物6のヒト血漿中におけるTTRへの結合能を評価した結果、化合物6はタファミジスよりも強力にTTRと結合することが明らかとなった。
化合物6、眼のTTR標的新規アミロイド病治療薬として有望
さらにラットを用いた薬物動態試験を行った結果、化合物6はタファミジスと比較して眼に有意に移行された。以上の結果より、化合物6は血漿中のみならず眼のTTRを標的とした新規アミロイド病治療薬として極めて有望であると考えられる、と研究グループは述べている。
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