悪化で下肢切断、潰瘍改善と切断を防ぐ治療法開発が急務
順天堂大学は12月6日、自己末梢血培養単核球細胞群RE-01について、バージャー病、膠原病により生じる難治性虚血性下肢潰瘍患者を対象に、複数回投与時の安全性および有効性を検討する医師主導治験を開始すると発表した。この研究は、同大大学院医学研究科再生医学の田中里佳教授らの研究グループによるもの。
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バージャー病や膠原病により生じる難治性虚血性下肢潰瘍は、血管炎や微小血管障害が主な原因となる。そのため、有効な治療法が無く、悪化すれば下肢切断を余儀なくされる。発症年齢が若いことで、難治性潰瘍により働き盛りの時期から生活困難となることも少なくない。さらに潰瘍が悪化し下肢切断となった場合の予後は極めて悪くなる。QOL(生活の質)の向上、生活困難性・医療費負担の軽減、早期の社会復帰のため、難治性潰瘍を改善し、切断を防ぐ有効な治療法の開発が切望されており、高いアンメットメディカルニーズが存在する。
自己末梢血培養単核球細胞群「RE-01」、機能的な再生細胞を多く含む
先行研究により、成人の末梢血単核球成分中に血管を再生させる細胞である血管内皮前駆細胞の存在が発見され、本細胞を用いた血管再生に関するさまざまな臨床試験で一定の安全性と有効性が報告されている。しかし、現在までに実施されている細胞を用いた血管再生治療は侵襲が高いこと、糖尿病や透析患者では血管内皮前駆細胞の数や血管・組織再生能が低下するため自己の細胞を用いた血管再生治療は十分な効果が得られないという課題がある。このことから、より低侵襲的で簡便な方法で細胞が採取でき、より多くの機能的細胞を移植できる血管再生治療が必要とされている。研究グループは、上記の課題に対し、少量の血液で多くの機能的な再生細胞を増幅できる培養法の開発を進めてきた。
RE-01は、田中教授らの研究グループが開発した培養法を用いて作成される自己末梢血培養単核球細胞群。血管内皮前駆細胞をはじめとする機能的な再生細胞を多く含んでいるため、血管新生・再生作用により微小血管を増やすことで組織中の血流量を増加させるだけでなく、抗炎症作用や創傷治癒を促す作用をもつことが確認されている。これらの複合的な作用により、炎症と虚血に起因する創傷を治癒することが期待され、血管炎による微小循環障害により生じるバージャー病、膠原病患者の難治性下肢潰瘍に対する新たな治療方法となりうると考えられている。また、患者に対する侵襲を100~200mlの採血に留め、培養は培地交換や継代を行わず短期間で製造できるため、低侵襲・低コスト・高効果な血管・組織再生治療として期待される。
複数回投与時の安全性・有効性評価の医師主導治験、24年3月まで
今回実施する治験(jRCT2033220413)は、従来の薬物療法では効果が不十分で血行再建術が困難なバージャー病、膠原病により生じる難治性虚血性下肢潰瘍を有する患者を対象とした。RE-01を3回投与した時の安全性および有効性を確認することを目的としている。目標参加人数は3名、期間は2022年8月~2024年3月で、実施医療機関は順天堂大学医学部附属順天堂医院となる。
今回の治験では、患者からの同意取得後に治験参加登録ならびにスクリーニング検査を実施し、治験への適格性の確認を行う。適格となった患者には、4週間毎に合計3回のRE-01を投与。それぞれ投与6日前にRE-01製造のための末梢血採血(100~200mL)を行う。細胞投与終了後は、約10か月の経過観察を行う。治験参加期間中は、定期的な来院、検査や診察により、安全性や有効性の評価を行うとしている。
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