心不全で緊急入院し心臓リハビリを受けた患者、退院150日以内の外来リハビリ有無で解析
国立循環器病研究センターは12月5日、日本の心不全入院後の外来心臓リハビリテーションの施行は、非施行群と比較して、医療費の増加を伴わずに心不全患者の予後改善、心不全再入院の減少と関連することを解明したと発表した。この研究は、同研究センター情報利用促進部の金岡幸嗣朗上級研究員、岩永善高部長、奈良県立医科大学の今村知明教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「European Journal of Preventive Cardiology」オンライン版に掲載されている。
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心不全患者数は、日本で増加傾向にあり、再入院を繰り返すことが知られている。心不全患者に対する包括的心臓リハビリテーションは、運動療法、患者教育、薬物治療などを含めた概念で、身体機能の改善や再入院の減少と関連することがこれまでの研究で示されていた。一方で、近年の心不全患者に対する外来心臓リハビリテーションの現状および、リハビリテーション施行と、再入院、医療費や薬物療法を含めたさまざまな要因との関連についての大規模な報告はなかった。
レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)は、日本全体の入院・外来を含むほぼ全ての保険診療を含むデータベースだ。NDBには、患者の性別、年齢、病名、処置や投薬内容などの内容が含まれる。今回の研究では、NDBから、2014~2019年度に、心不全で緊急入院し、かつ、入院中に心臓リハビリテーションを受けている患者を対象とした。退院後150日以内の外来心臓リハビリテーション施行の有無で患者を2群に分け、全死亡を主要エンドポイントとし、心不全再入院、退院1年後の心不全に対する薬物治療内容、退院1年半の医療費を副次エンドポイントとして設定し、交絡因子を調整し、解析した。
外来心臓リハビリ施行、全死亡・心不全再入院「減」と関連
研究の結果、心不全入院した25万528人の対象患者のうち、1万7,884人(7.1%)の患者が外来心臓リハビリテーションを受けていた。患者の背景をプロペンシティスコアマッチングで調整後、外来心臓リハビリテーションの施行は、全死亡の減少、心不全再入院の減少と関連しており、1年後のβ遮断薬などの心不全薬物治療の継続割合が高い結果だった。
また、外来心臓リハビリテーション施行群では、非施行群と比較し、外来医療費は増加する一方、入院医療費は減少しており、総医療費の増加は見られなかった。
外来心臓リハビリ施行割合は低く、増加の必要性を示唆
今回の研究から、近年の日本でも、外来心臓リハビリテーションの施行は心不全患者の死亡や再入院の減少と関連していることが示された。さらに、心不全患者に対する心臓リハビリテーションの施行は、医療費の観点からみても、推奨されるべき治療法であることがわかったとしている。一方で、外来の心臓リハビリテーション施行割合は依然として低く、今後増加させていくことが必要であることが示唆された、と研究グループは述べている。
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