薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会は1日、塩野義製薬の新型コロナウイルス感染症経口治療薬「ゾコーバ錠」(一般名:エンシトレルビルフマル酸)の安全対策として、医療情報データベース(MID-NET)の「早期安全性シグナルモニタリング」を活用する案を了承した。緊急承認された医薬品等の安全性確保にはリアルワールドデータ(RWD)の活用が求められており、2023年度初回の部会で解析結果が報告される見通しだ。
ゾコーバは、5月に創設された緊急承認制度が初めて適用された医薬品。同制度で承認された医薬品等に関する安全対策として、専門家による評価を高頻度で行うほか、RWDの活用や集積した事例を統計的に解析した上で対策を実施することとしている。
厚生労働省は、この日の部会で対応案を提示。高頻度の専門家による評価として、調査会で月1回をメドに必要に応じて感染症の専門家を参考人として招き、副作用報告の状況を確認することとした。
RWDの活用として、医薬品医療機器総合機構(PMDA)が管理・運営するMID-NETを用いた解析のうち、安全性に関するシグナルの有無について迅速に解析結果を得ることを目的とした早期安全性シグナルモニタリングを実施し、モニタリングによる解析データを安全性評価に生かす。
データの解釈には一定の症例数の集積が必要なため、活用可能なデータが集まることが想定される来年度初回の部会で解析結果の報告を受ける。
具体的な調査実施計画として、同剤を処方された患者における4系統(肝機能、腎機能、血液、間質性肺炎のバイオマーカー等)の臨床検査値異常の発現率を、対照薬が処方された患者と比較してシグナル検出を行う。現時点では対照薬として、コロナ治療薬「ラゲブリオ」(モルヌピラビル)のほか、抗インフルエンザウイルス薬「タミフル」(オセルタミビル)を想定している。
厚労省は、「副作用報告等に加え、新たな情報源として活用するが、早期段階でシグナルが検出されてもそれが直ちに医薬品のリスクを示しているものではない。検出された場合は、その他の情報源も活用しながらリスクの有無を検討し、必要に応じてさらに厳密に計画した患者背景を調整した上で、薬剤疫学調査の実施も想定しつつ取り組みを進める」との考えを示した。