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オシメルチニブ適応拡大に向け医師主導治験実施、肺がん患者会の要望から-近大

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2022年12月05日 AM11:36

第3世代EGFR-TKIオシメルチニブ、T790Mならば第1/2世代薬耐性の治療に使用可能

近畿大学は12月2日、従来の治療薬が効かなくなった非小細胞肺がん患者に対し、(一般名:)」を用いた医師主導治験を実施し、その有効性を確認したと発表した。この研究は、同大医学部内科学教室腫瘍内科部門の中川和彦主任教授、武田真幸講師 (現:奈良県立医科大学がんゲノム・腫瘍内科教授)らの研究グループによるもの。研究成果は、「第63回日本肺癌学会学術集会」において、研究チームが発表している。

肺がんは、進行速度や治療効果の違いによって、小細胞肺がんと非小細胞肺がんに大別され、そのうち非小細胞肺がんは肺がん全体の8〜9割を占めている。非小細胞肺がんの多くは、がん細胞上のEGFRというタンパク質に変異が生じ、がん細胞が増殖し続けることが知られている。EGFRは非小細胞肺がんの40%で認めるドライバー遺伝子である。EGFR遺伝子変異がある場合、これを抑制する分子標的治療薬であるEGFRチロシンキナーゼ阻害剤を第一選択薬として使用することにより、長期生存が期待できる。しかし、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤を使用しても治癒するわけではなく、耐性化により治療薬が効かなくなることがある。

耐性化のメカニズムとして、EGFR遺伝子にT790Mという耐性遺伝子が出現することによりEGFRタンパク質の構造変化が起こり、第1世代、第2世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤がEGFRタンパク質に結合できないことが原因と判明しており、EGFR遺伝子変異患者の約50%を占める。そのため、T790Mの変異があるEGFRに結合して、EGFR活性を阻害できる新たな第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害剤「オシメルチニブ」が開発された。これにより、第1世代、第2世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤で治療した患者が耐性化した場合、T790M陽性であればオシメルチニブで治療することで、耐性克服が可能となった。

EGFR変異陽性の全ての患者で「初回治療」に使用可能だが、他の治療を受けたT790M陰性患者には使えない

ところが、その後オシメルチニブはEGFR遺伝子変異陽性患者に初回治療で用いると第1世代、第2世代で治療するより有効期間が長いことが証明され、現在ではT790Mの有無に関係なくすべてのEGFR遺伝子変異陽性患者で、初回の治療からオシメルチニブが使用されることになった。そのため、オシメルチニブ承認前に第1世代、第2世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤で治療を開始した患者において、耐性化により治療薬が効かなくなったとき、T790M陰性の患者はオシメルチニブが使えないという状況となった。

肺がん患者会からの要望を受け医師主導治験を実施

オシメルチニブ臨床開発初期データではT790M陰性の患者でも20~30%の患者で腫瘍縮小を認めていることから、第1世代、第2世代EGFRチロシンキナーゼ阻害剤で治療を開始し、耐性時にT790M陰性である患者への適応拡大を求める声が肺がん患者会からあがった。

研究グループは、肺がん患者会ワンステップ理事長の長谷川 一男氏より「患者会から医師主導治験をお願いしたら実施は可能ですか。費用は患者会で集めます。」との相談を受けた。EGFR遺伝子変異陽性で耐性遺伝子であるT790M遺伝子が陰性の患者は、承認されたオシメルチニブで治療が受けられなくて悔しい思いをしていた。オシメルチニブを製造販売している製薬企業の支援を受ける必要がある旨を伝え、企業宛に要望書の提出をお願いした。同患者会から1か月後に要望書が届いたことが始まりで、医師主導治験実施者の立場として、要望書に加筆し製薬企業に連名で提出した。製薬企業としても初めての経験ということもあり、治験実施が決まるまでには多くの紆余曲折があった。絶望的な状況にも至ったが、その製薬企業で関わられた国内外の担当者の支援もあり奇跡的に実施することが可能となった。

第2相試験、55症例が登録

非小細胞肺がん患者に対する、オシメルチニブの有効性を検討するため、同大医学部内科学教室を主施設として、国内15施設において、医師主導治験となる第2相試験を行った。この治験には、令和2年(2020年)8月から令和3年(2021年)2月までの短期間での実施にもかかわらず、55症例が登録された。

T790M陰性患者への有効性確認、適応拡大を目指す

困難な歩みの中で実現した同治験は、オシメルチニブのT790M陰性の患者への有効性を示した。がん患者会提案型の医師主導治験成功の歴史的結果により、患者自身でもできることとして、大きな可能性を発見した。「本治験は、肺がん患者会からの要望にて実現に至った、オシメルチニブの適応とはならない、T790M陰性の患者に対し実施した、初めての医師主導治験である。この治験によって、非小細胞肺がんの治療にオシメルチニブの適応が拡大されることを目指す」と、研究グループは述べている。

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