11月30日に横浜市で行われた日本臨床薬理学会学術総会で、厚労省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課の福田祐介氏が明らかにしたもの。医療DXの推進で臨床試験の実施形態は変化しており、医療機関に来院せずに自宅や職場から試験への参加が可能なDCTの環境整備が進められている。
6月に閣議決定された規制改革実施計画では、治験実施医療機関の医師等が被験者へ治験に関する必要な説明を行い、同意の取得を非対面・遠隔で実施するための適切な方法やデータの信頼性確保等に関するガイダンスを2022年度中に策定することが明記された。
厚労省はガイダンス策定に当たり、2021年度に国内外のオンライン技術を活用した治験の実例調査や海外のガイドライン調査、有識者へのインタビュー調査などを行ってきた。
策定中のガイダンスでは、▽本人確認の方法▽被験者のプライバシー保護▽治験責任医師等とのコミュニケーション方法の確保▽電子署名に求められる要件▽電磁媒体を含む説明・同意文書の管理や交付の方法▽説明文書と見なす動画等の範囲▽情報通信システムの利用・研修の実施▽実施医療機関に対する導入支援――などの項目を盛り込む予定だ。
国内で行われている治験の多くが国際共同治験に組み入れられているが、DCTへの対応が課題となっている。福田氏は「治験の効率的な実施に当たってオンライン技術をいかに取り入れるかが重要だが、国内での普及は十分に進んでいないのが現状」と指摘した。
動画や音声等を使用した被験者への情報提供や同意を得るeコンセントをガイダンスの第1弾に選んだ理由については、「現行のGCP省令やガイドライン下において実施可能か、どのように実施すべきなのかなどグレーゾーンになっている部分も多く、治験依頼者側での判断が難しい」と説明。ガイダンスを通じて現行規制に逸脱がないよう、eコンセントを実施するための手順を業界向けに分かりやすく示す方向だ。
福田氏は、「ガイダンスを示すことで、縛りが強すぎて逆に国内の普及の妨げになってしまうことは避けたいと思っている。ガイドライン策定によってグレーゾーンを明確化することで、信頼性を確保しながら患者の利便性が上がることを期待したい」と語った。