薬価4億8300万円超の血友病Bの遺伝子治療薬をFDAが承認
米食品医薬品局(FDA)は11月22日、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いた血友病Bの遺伝子治療薬Hemgenix(一般名etranacogene dezaparvovec)を承認した。同薬剤による治療は1回の投与で完了するが、価格は1回当たり350万ドル(1ドル138円換算で約4億8300万円)に上るという。投与の対象は、現在、第IX因子製剤による補充療法を受けている成人患者、現在または過去に命に関わる出血を経験したか、重症の自然出血エピソードが繰り返し生じている成人患者である。
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血友病Bは、血液凝固第IX因子が欠落しているか、その量や質が不十分であることから生じる遺伝性の血液疾患である。血液凝固第IX因子は、止血に必要な血栓を形成する際に不可欠なタンパク質である。血友病Bの主な症状は、けがや手術後、歯科治療後などに生じる、長引く出血または重度の出血である。重症例では、はっきりとした原因なしに自然に出血が発生することもある。また、止血に時間がかかると、関節や筋肉、脳などでの出血といった重度の合併症を招きかねない。有病率は4万人に1人で、罹患者は男性に多い。女性でも血友病Bの原因となる遺伝子変異を有する保因者はいるが、約10〜25%に軽度の症状が現れる程度であり、中等度または重度の症状が現れることはまれである。
血友病Bに対する一般的な治療法は、足りない血液凝固第IX因子を凝固因子製剤で定期的に補う補充療法である。FDA生物製品評価研究センター(CBER)所長のPeter Marks氏は、「血友病に対する遺伝子治療の可能性が見え始めてすでに20年以上が経過した。血友病の治療は進歩したが、それでも、出血エピソードの予防と治療は個人の生活の質(QOL)に悪影響を及ぼしかねない」と話す。その上で同氏は、「Hemgenixの承認は、血友病B患者に新しい治療法の選択肢をもたらした。また、血友病B関連の疾病負荷が高い人々にとっては、革新的な治療法の開発が大きく進歩したことを意味する」と述べている。
Hemgenixは、血液凝固第IX因子の遺伝子を運ぶウイルスベクターで構成されており、1回の静脈注射で投与される。ウイルスにより運ばれた遺伝子は肝臓で発現し、第IX因子を産生してその血中濃度を増加させ、それにより出血エピソードを制限するという仕組みだ。
Hemgenixの安全性と有効性は、重度または中等度の血友病Bの男性患者57人(18〜75歳)を対象にした2件の試験により確認された。有効性は、対象者の年間出血率(ABR)の減少に基づき確立された。また、54人を対象にした1件の試験では、第IX因子の活動レベルが増加し、定期的な第IX因子補充療法が必要になる頻度が減少し、ABRはベースラインと比べて54%減少した。確認された副作用は、肝酵素レベルの上昇、頭痛、軽度の注入反応、およびインフルエンザ様症状などであった。
Hemgenixの承認は、CSLベーリング社に対して付与された。AP通信によると、同社は、「この薬剤により、血友病B患者での出血に対する治療数が減るため、究極的には医療費の削減につながる」との見解を示しているという。ほとんどのFDA承認薬と同様に、Hemgenixの治療代は、患者ではなく民間または政府の保険が負担するものと見込まれている。
▼外部リンク
・FDA Approves First Gene Therapy to Treat Adults with Hemophilia B
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