■2023年度に手順書を改訂
厚生労働省の高齢者医薬品適正使用検討会が11月30日に開かれ、診療所や薬局、介護施設などが連携した高齢者のポリファーマシー(多剤服用)対策のモデル事業に選定された広島市薬剤師会など4地域が中間報告した。薬局薬剤師にポリファーマシー対策への意識が高まるなどの成果が見られた一方、処方見直しや減薬を行う上で多職種間の情報共有が課題として指摘された。厚労省は中間報告を踏まえ、来年度にも高齢者医薬品適正使用の指針や業務手順書の改訂案を作成する方針である。
ポリファーマシー対策をめぐっては、国が2019年に「高齢者の医薬品適正使用の指針」を策定。現場での運用が進むよう指針の内容から実践へと促すため、取り組みを分かりやすく記載した業務手順書を作成した。
今年度は、昨年度に実施した医療機関を対象としたモデル事業の経験をもとに、院内から医師や薬剤師の連携のもと地域へと広げるため、全国4地域で業務手順書の有用性を検証するモデル事業を開始した。
広島市薬剤師会は、業務手順書について「病院の医療スタッフの目線で作られており、地域医療に適用する場合は修正が必要」と指摘。ポリファーマシー対策実施後に、地域の病院や薬局、介護施設が患者情報を共有していく体制を手順書に記載すべきとした。
宝塚市薬剤師会では、モデル事業開始前の時点で会員薬局全体のうち2割強が服薬情報提供書(トレーシングレポート)の送信件数ゼロとなっていたため、多職種間の顔が見える関係作りに加え、薬剤師会ホームページから様式を入手可能とすることでトレーシングレポートを活用する環境を構築した。
さらに、お薬手帳の中に「薬局カード」を入れてかかりつけ薬局を認識をしてもらうと同時に、お薬手帳を介して他職種にフィードバックする試みを始めた。
橋場元構成員(日本薬剤師会常務理事)は、「薬局の立場だとトレーシングレポートが情報提供となるが、情報伝達が薬局と病院の1対1になりやすい。お薬手帳を使うと患者や複数の医師、かかりつけを持たない薬局では複数の薬局の目に触れることができる」と期待した。
美原盤構成員(全日本病院協会副会長)は「トレーシングレポートは薬剤師から医師への情報提供ツールだが、臨床現場では認知されていない。医療の現場で一定の地位を占めているお薬手帳と連携するのがいいかもしれない」と語った。
厚労省は、ポリファーマシー対策にトレーシングレポートやお薬手帳の活用などを盛り込んだ業務手順書の改訂案を検討する方針。