等尺性膝関節伸展・股関節屈曲トレーニング量と筋力向上の個人差を研究
芝浦工業大学は11月14日、筋力を向上させるためにはトレーニング量が重要であり、特にトレーニングによる筋力向上度合いが相対的に小さい人たちにとって、そのことが顕著であることを発見したと発表した。この研究は、同大システム理工学部の赤木亮太教授、静岡産業大学スポーツ科学部・江間諒一准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Frontiers in Physiology」誌に掲載されている。
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トレーニングやリハビリテーションなどの運動は、健康的なライフスタイルにおいて重要な役割を担っている。これらの運動プログラムは、目的に応じて必要な内容が異なる。また、そのプログラムは、効果的な影響を与える要因の特定や分析に基づいて設計される必要がある。筋力を大きく向上させるためには、高強度のトレーニングが重要であると考えられている。さらに、最近の研究では筋力の増強にはトレーニング強度だけではなく、トレーニング量が重要であることが示唆されている。
今回の研究では、トレーニング量とトレーニングによる筋力の向上度合いの個人差を調べた。そして、異なる関節動作のトレーニングを行う群を設定し、筋力向上の比較を行った。具体的には、運動習慣のない26人の健康な被験者について、膝関節伸展を行う群と股関節屈曲を行う群に分類。等尺性トレーニングを4週間実施した。トレーニングは週3回行われ、20秒に1回の割合で3秒間の収縮運動を10回、合計4セットで構成。トレーニングにおいて参加者は、できるだけ速く、強く、最大限の力を発揮した。各セッションにおけるトレーニング量は「40回の収縮の時間-トルク曲線」の下の面積を計算することによって算出。トレーニングの前後において、最大随意筋収縮(MVC)トルク(トルクのピーク値)を計測し、膝関節伸展トレーニングと股関節屈曲トレーニングを行った群、それぞれの筋力の変化を評価した。
総トレーニング量、筋力変化「小」の人でのみ筋力変化の程度と正の相関関係
実験の結果、膝関節伸展と股関節屈曲を行った群の両方で筋力が有意に増加し、その増加の程度には群間差が見られなかった。さらに、トレーニング量の時間経過の変化についても有意差がなく、どちらの群においても同様の結果となった。
次に、筋力の変化の程度に基づき、筋力が大きく変化した人たちと変化が小さかった人たちに分けて分析。筋力の変化が大きかった人たちと比較して、変化が小さかった人たちは、トレーニング実施前における体重当たりの筋力と総トレーニング量が大きいという結果になった。さらに、総トレーニング量については筋力の変化が小さかった人たちにおいてのみ、筋力の変化の程度と正の相関関係があった。
スポーツ選手への最適なトレーニング方法検討に活用できる可能性
実験の結果より、トレーニング量そのものは、集団内における筋力増加の程度の大小を決定する要因ではないことが示された。しかし、ひとたび筋力増加の程度が小さかった人たちをピックアップしてみると、総トレーニング量は筋力増加を決定する重要な要因であることが示唆された。筋力増加の程度が小さい人たちは、体格に対するもともとの筋力が大きい人たちであり、これはアスリートの特徴に当てはまる。同研究で得られた成果は、スポーツ選手やそれに携わるトレーニング指導者にとって、最適なトレーニング方法を検討するうえで有効に活用できる可能性があるという。
筋力の向上は、健康を維持し、スポーツ活動を楽しむために重要だ。今回の研究をベースに、テーラーメイド型トレーニングの開発に貢献していきたいと考えている、と研究グループは述べている。
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・芝浦工業大学 プレスリリース