膝伸展「筋力」に焦点を当てる手術後のリハビリテーション、歩行機能の回復にギャップ
大阪公立大学は11月25日、全人工膝関節置換術後の歩行機能と膝伸展速度の関係に着目し、歩行に与える影響を比較した結果、手術側膝伸展速度と非手術側の大腿四頭筋筋力が重要な要因であることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院リハビリテーション学研究科の岩田晃教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「PLOS ONE」にオンライン掲載されている。
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全人工膝関節置換術(TKA)は、主に加齢と共に進行する変形性膝関節症に対して最も一般的に行われている手術である。この手術は、除痛や関節可動域の回復などに効果が認められるが、歩行機能の改善が十分でないことがある。手術後のリハビリテーションでは、膝伸展(大腿四頭筋)筋力に焦点が当てられるが、膝伸展筋力と歩行機能の回復にはギャップがある症例が多いことから、他の要因が関与している可能性が考えられる。変形性膝関節症の患者の多くは、痛みやそれに伴う歩行障害を改善するためにTKAを選択する。そのため術後の歩行機能改善は、高齢者のQOLにおいても重要な課題である。
TKAを受けた患者186人の歩行機能回復と複数の測定項目の関係を分析
研究グループは筋パワーと運動パフォーマンスの関係から、膝伸展速度がTKA術後患者の歩行機能にとって重要な要因であるとの仮説を立て、その検証を行った。大阪府下の急性期病院4施設で、TKAを受けた患者186人(平均年齢75.9歳、男性43人、女性143人)を対象とした。測定は手術前、手術後2週間、手術後3週間の各時期に行い、測定項目は歩行機能(歩行速度・TUG)、膝伸展角速度、膝伸展筋力、膝関節可動域、痛み(VAS)とした。膝伸展角速度は、治療用ベットの端に座り「できるだけ速く膝を伸ばして下さい」との説明を行い、ジャイロセンサーで無負荷での最大角速度を計測した。統計解析として、歩行機能とその他の項目の関係について、どの項目が歩行機能にとって重要であるかについて重回帰分析を行った。その結果、手術側の膝伸展速度が最も重要であるという結果が得られた。
新たなリハビリテーションプログラムの開発につながることが期待
TKA術後の歩行機能回復を目的としたリハビリテーションでは、筋力の改善を目的としたトレーニングが中心に実施されているが、今回の研究の結果に基づくと、下肢を素早く動かす能力(膝伸展速度)を向上させることを目的としたリハビリテーションが有効である可能性が示唆される。「今後の研究では、運動速度に焦点を当てたリハビリテーションの効果について検証を重ねていきたいと考えている」と、研究グループは述べている。
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