医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 妊婦と2歳以下の子の母親のコロナワクチン接種意向の調査結果-成育医療センターほか

妊婦と2歳以下の子の母親のコロナワクチン接種意向の調査結果-成育医療センターほか

読了時間:約 3分14秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2022年11月28日 AM10:49

デルタ株流行期に実施、接種意向とワクチンリテラシーの関連を調査

国立成育医療研究センターは11月25日、妊産婦と2歳以下の子を持つ母親の新型コロナウイルス感染症ワクチン接種に対する意向とその要因を調査、分析した研究結果を発表した。この研究は、同センター社会医学研究部の森崎菜穂部長、石塚一枝研究員、教育研修部の高橋揚子臨床研究員と、国立国際医療研究センターの大川純代上級研究員、大阪国際がんセンターがん対策センター疫学統計部の田淵貴大部長補佐らの研究グループによるもの。研究成果は、「Vaccine」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

新型コロナウイルス感染症の感染、重症化予防にはワクチンが有効であり、重症化リスクの高い妊婦ではワクチン接種が推奨されている。また、これまでの報告から妊婦や子どもを持つ若年女性では他の世代と比べてワクチン接種率が低いとされている。乳幼児期には、新型コロナ以外の接種すべきワクチンが多く、新型コロナウイルス感染症パンデミック下には、それらのワクチンの接種率の低下も報告されており、小さな子どもを持つ母親のワクチン全般についての接種意向も重要な課題となっている。

ワクチン接種意向を決定する重要な要因の1つとして、ワクチン情報に対する情報リテラシーである「ワクチンリテラシー」があり、リテラシーを高めることで、ワクチン接種率の向上につながることが期待されている。

研究グループは、インターネットを使用した「日本における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)問題による社会・健康格差評価研究(JACSIS study)」を利用し、妊婦と乳幼児の母親のコロナワクチン接種意向の現状とワクチンリテラシーとの関連を調べる目的で研究を行った。2021年7~8月のデルタ株流行期に、インターネットを用い、全国の妊婦と2歳以下の子どもを持つ母親1万人を対象に調査を行い、7,327人から回答を得て解析を行った。

「ワクチン接種に消極的」、51%、2歳以下の子どもの母親32%

新型コロナウイルスワクチンに関して「ワクチンを打ちたくない・様子をみてから接種するかを決めたい」と答えた割合は、妊婦で51%、2歳以下の子どもの母親で32%と、妊婦のほうがワクチンに対して消極的であることがわかった。

ワクチン接種への消極性に、それぞれ異なるワクチンリテラシーが関連

また、ワクチン接種への消極性にはワクチンリテラシーが関連しており、妊婦では、ワクチンリテラシーの中でも、情報をコミュニケーションの中で批判的に吟味し、実行に移す「相互作用的(interactive)/批判的(critical)ワクチンリテラシー」が低い人は高い人に比べて1.69倍ワクチン忌避になりやすいことがわかった。一方、2歳以下の子どもの母親は、情報を受け取り、理解する「機能的(functional)ワクチンリテラシー」が低い人は高い人と比べて1.37倍ワクチン忌避になりやすく、「相互作用的(interactive)/批判的(critical)ワクチンリテラシー」が低い人は高い人と比べて1.28倍ワクチン忌避になりやすいことがわかった。

接種に消極的な理由、妊婦、2歳以下の子の母親ともに「副反応が心配」が最多

「ワクチンを打ちたくない・様子をみてから接種するかを決めたい」と答えた理由について、妊婦、2歳以下の母親ともに「副反応が心配だから」が最多だった。妊婦では「相互作用的(interactive)/批判的(critical)ワクチンリテラシー」と関連して「お腹の子どもや授乳中の子どもへの影響が心配だから」という回答が多く、2歳以下の子どもを持つ母親では「機能的(functional)ワクチンリテラシー」と関連して、「ワクチンが感染や重症化を予防する効果があまりないと思うから」、「ワクチンの成分を信用できないから」という回答が多いことがわかった。

ワクチンリテラシーが高い人は研究機関のウェブサイト利用割合が高い

さらに、ワクチンリテラシーが高い人は、信頼できる情報を得るために、医療従事者、専門家、官公庁や大学・学会などの研究機関のウェブサイトを利用している割合が高いことがわかった。妊婦は医療従事者から情報を得ている割合が高いこともわかった。

それぞれの集団の特徴に合わせたより効果的な支援を

研究により、妊婦と幼い子どもを持つ母親のワクチン接種意向には異なるタイプのワクチンリテラシーの違いが関係しており、それらがワクチン接種を決める理由や情報収集の方法につながっていることが明らかになった。妊婦は、妊婦健診等で定期的に医療機関を受診する機会があることから質の高い情報を平等に得られる機会があるため、それらの情報を活用し行動に移すためのコミュニケーションの場を支援することで「相互作用的(interactive)/批判的(critical)ワクチンリテラシー」を高め、ワクチン接種率の向上が期待される。一方、幼い子どもを持つ母親には、誰にでもわかりやすく、質の高い情報を届けるための支援が望まれる。「今後、それぞれの集団に対してより効果的な支援をしていくことでワクチン接種率の向上につながることが期待され、政策提言につなげていきたい」と、研究グループは述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 血液中アンフィレグリンが心房細動の機能的バイオマーカーとなる可能性-神戸大ほか
  • 腎臓の過剰ろ過、加齢を考慮して判断する新たな数式を定義-大阪公立大
  • 超希少難治性疾患のHGPS、核膜修復の遅延をロナファルニブが改善-科学大ほか
  • 運動後の起立性低血圧、水分摂取で軽減の可能性-杏林大
  • ALS、オリゴデンドロサイト異常がマウスの運動障害を惹起-名大