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末梢肺病変に対する気管支腔内超音波断層法を用いた診断率予測モデル構築-名大ほか

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2022年11月21日 AM11:18

R-EBUSによる気管支鏡検査で末梢肺病変の診断率は向上するが、事前に診断率を具体的に提示するのは困難だった

名古屋大学は11月17日、末梢肺病変に対する気管支腔内超音波断層法(:radial endobronchial ultrasound)を用いた気管支鏡検査の新たな診断率予測モデルを構築したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科呼吸器内科学博士課程3年生・国立がん研究センター中央病院呼吸器内視鏡科レジデントの伊藤貴康氏(現 名古屋大学医学部附属病院呼吸器内科病院助教)、医学部附属病院呼吸器内科の岡地祥太郎病院助教、大学院医学系研究科病態内科学講座呼吸器内科学の橋本直純准教授(現 藤田医科大学呼吸器内科学講座教授)、医学部附属病院先端医療開発部の西田一貴病院助教、国立がん研究センター中央病院呼吸器内視鏡科・呼吸器内科の松元祐司医員らの研究グループによるもの。研究成果は、「Respiration」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

(肺の異常影)を指摘された際、正確な診断を得るためには組織検査が必要になる。この組織検査は手術やCTガイド下生検、気管支鏡検査によって達成することが可能だが、初期検査としてどの検査を用いるかは、それぞれの検査の診断率と合併症を総合的に判断することが必要である。現在、気管支鏡検査を行う際、楽に検査を受けられるように、麻酔薬(鎮静剤や鎮痛剤など)を用いているが、麻酔薬の効果は個人差があり、また、病変によっては気管支鏡検査による確定診断が得られず、患者に対して負担だけを残す結果となってしまうことがある。

末梢肺病変の確定診断目的で気管支鏡検査が行われる際、気管支鏡検査による診断率は、従来の透視下気管支鏡検査の場合、30~60%と報告されており、CTガイド下生検や手術による診断率90%前後と比較し診断能は不十分である。しかし、近年、R-EBUSや気管支ナビゲーションシステムの導入とともに末梢肺病変の診断率は70〜80%前後まで向上している。末梢肺病変を呈する患者さんに対して現在よく用いられているR-EBUSは、超音波検査を用いた気管支鏡検査で、R-EBUSを用いた検査の診断率は基本的に、気管支鏡検査中のプローブと病変との位置関係(R-EBUS所見)に強く相関する。具体的にはプローブが病変内で生検を行うと診断率は90%前後、プローブが病変と接する位置で生検を行うと診断率は60%前後、プローブが病変外の位置で生検を行うと18%前後と報告されており、プローブが病変内で生検が行われることが理想的である。

気管支鏡検査成功に寄与する検査前因子として、病変への関与気管支、病変の大きさが既報で報告されているが、気管支鏡検査前にR-EBUSを用いた末梢肺病変の診断率を具体的に提示することは困難だった。また、予め気管支鏡検査による診断率が低い場合、診断率と合併症を考慮し、気管支検査以外のCTガイド下生検や手術を提示することが困難だった。

1,600例近くのデータをもとに、7つの因子から計算される予測モデルを構築

研究グループは、国立がん研究センター中央病院呼吸器内視鏡科の約3年半1,600例近くのデータをもとに、予測モデルを構成する変数選択として、まずは先行研究をもとに、R-EBUSを用いた気管支鏡診断成功の鍵となる2つの変数(bronchussign、病変の大きさ)を絶対に外せない変数として選択した。その後、その他の変数選択はAICが最小となるように行い、病変の肺葉、肺門からの距離、病変の性状、胸部レントゲンでの可視性、背景肺の5つの変数が選択された。AICが最小となった多変量ロジスティック解析の結果をもとに、上記の7つ(2つ+5つ)の変数から構成される予測式を作成したところ、ROC-AUC=0.742、内的妥当性Internal cross-validation AUC=0.734と、両者は予測精度が高い結果となった。予測式は臨床家が計算しやすいように、sizeの係数が1になるようにスケーリングを行い、各因子のparameterとscoreをかけあわせて求められる簡略化した式、total score(Integer-Based score)として認めることが可能であり、各因子をそれぞれ重み付けされた後に計算される予測診断率とtotal scoreの換算表を示した。

研究グループは、「今後は本結果を多施設研究へと発展させ、呼吸器内視鏡学会や呼吸器学会等への提言、ガイドライン化に向けて発信していきたいと考えている。今後、精度向上を目指した画像支援システムを組み合わせ、アプリケーション化することで、呼吸器内科以外の科の医療スタッフへも使いやすいようにしていくことも目指している」と述べている。

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