従来のバイタルサイン測定は「接触式」センサ、小児ストレス最小限に「非接触式」を
電気通信大学は11月14日、新生児集中治療室(NICU)での新生児モニタリング用に、医療用レーダーによるバイタルサイン・モニタリングシステムを開発したと発表した。この研究は、同大大学院情報理工学研究科機械知能システム学専攻の孫光鎬准教授と昭和大学江東豊洲病院こどもセンターの阿部祥英センター長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Computer Methods and Programs in Biomedicine」に掲載されている。
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小児は生理機能が未熟で外界からの刺激を受けやすいため、呼吸・心拍などのバイタルサインは変動しやすいとされている。また、新生児は自分の症状や苦痛を表現できない。そのためNICU等では、バイタルサインによって全身状態を把握し、異常を早期に発見することが重要となる。しかし、従来のバイタルサイン測定においては接触式のセンサが用いられることから、小児へのストレスを最小限にする工夫が求められてきた。また、接触式センサでは、体動や啼泣により測定値が変動しやすいという課題もあった。
非接触式のバイタルサイン検出システムを用いれば、ストレスを軽減しながら、NICUのみならず家庭内や自動車内など、さまざまな場所でヒトの健康状態を確認できるようなサービス提案につながると考えられる。例えば昨今、園児がバスの中に置き去りにされるという事案も発生しており、取り残された児童をレーダーによるセンシングによって高精度に検出する技術への期待も高まっている。
医療用レーダーで非接触での測定可能に、従来の呼吸・心拍計測に迫る精度
今回開発された医療用レーダーによるバイタルサイン・モニタリングシステムでは、高度な信号処理アルゴリズムにより、従来の呼吸と心拍計測に迫る精度でありながら、完全非接触での測定が可能だ。同システムでは、24GHzの非接触医療用レーダーと、呼吸信号と心拍信号を分離する非線形フィルタ、心拍データを抽出するテンプレートマッチング・アルゴリズム、脈動を時系列で推定する適応型ピーク検出アルゴリズムが採用されている。
接触式センサと比較、相関係数RR0.83/HR0.96/IBI0.94と高い相関
臨床試験には、男性5人と女性4人(24±5歳)からなる9人の健康な被験者が参加。また実際のNICU環境では、新生児2人を含む3人の低年齢小児の臨床試験が行われた。その結果、従来の接触式センサと比較して、相関係数がRR(心拍数変動)、HR(心拍数)、およびIBI(心拍間隔)それぞれで、0.83、0.96、および0.94と高い相関を示した。
NICU向け見守り製品開発、自動車内での児童見守りシステムなどの試作検討を開始
研究グループは同システムについて、24GHzの非接触医療用レーダーと高度な信号処理アルゴリズムの組み合わせにより、高精度に小児の生体活動の見守りを行うことができるものとしている。この技術を応用すれば、医療、在宅ケアやモビリティなど、さまざまな分野での安全・健康管理や、医療福祉人材の人手不足解消に貢献することができるという。
電気通信大学発ベンチャー企業の株式会社Sun Labでは、同技術を用いたNICU向けの見守り製品開発や、自動車内での児童見守りシステムなどの試作検討を始めている。また、この技術を活用した医療機器やサービス、コンシューマ製品開発を共同で行う企業を募集しているとしている。
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