野菜・果物、フラボノイドの豊富な果物の摂取はうつ病のリスク低下と関連するのか?
国立がん研究センターは11月15日、野菜・果物およびフラボノイドの豊富な果物の摂取とうつ病との関連を調べた結果、果物およびフラボノイドの豊富な果物の摂取量が多いほど、うつ病が発症するリスクが低いことを明らかにしたと発表した。この研究は、同センターと国立精神・神経医療研究センターなどで構成される研究グループによるもの。研究成果は、「Translational Psychiatry」に掲載されている。
画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)
うつ病は、障害によって失われた健康的な生活の年数が循環器疾患と同じ程度で、個人にとっても国全体にとっても負担が大きいことで知られている。先行研究では、野菜や果物の摂取が、うつ病に予防的に働く可能性が示されており、とりわけフラボノイドというポリフェノール化合物は脳由来神経栄養因子や、酸化ストレスと神経炎症の抑制作用により、抗うつ効果を持つことが示唆されていた。
そこで研究グループは今回、野菜・果物およびフラボノイドの豊富な果物の摂取が、うつ病のリスク低下と関連するか否かを調査した。
「こころの検診」参加の1,204人対象、野菜・果物の摂取量や栄養素とうつ病との関連を検討
今回の研究では、1995年と2000年に行った2回の食事調査アンケートに回答があり、かつ2014~2015年にかけて実施した「こころの検診」に参加した1,204人を対象とした。2回のアンケートから、野菜、果物およびフラボノイドの豊富な果物の摂取量の平均値を計算し、それぞれについて人数が均等になるよう5グループに分け、摂取量が最も少ないグループを基準とした場合の、他のグループのうつ病発症リスクとの関連を調べた。
また、野菜・果物に関連する栄養素として、α-カロテン、β-カロテン、ビタミンC、ビタミンE、葉酸の平均摂取量とうつ病との関連も検討した。解析時には、年齢、性別、雇用、飲酒、喫煙、運動習慣の影響が出ないよう、統計学的に調整した。
果物摂取量とうつ病発症リスク低下に関連、野菜/関連栄養素の摂取量とは関連みられず
1,204人のうち、93人が精神科医によってうつ病と診断された。なお、認知症によって引き起こされたうつ症状と区別するため、認知症を合併している人は除外した。
解析の結果、果物の摂取量が最も少ないグループと比較して、摂取量が最も多いグループにおけるうつ病のオッズ比は、0.34(95%信頼区間: 0.15-0.77)で、フラボノイドの豊富な果物の摂取量が最も少ないグループと比較して、摂取量が最も多いグループのうつ病のオッズ比は0.44(95%信頼区間: 0.20-0.97)だった。一方、野菜ならびに関連栄養素の摂取量と、うつ病との間には関連がみられなかったとしている。
果物全体が持つ抗酸化作用などが、うつ病の発症に対し予防的に働いた可能性
今回の研究により、果物およびフラボノイドの豊富な果物の摂取量が多いほど、うつ病が発症するリスクが低いことが明らかにされた。果物全体とフラボノイドが豊富な果物の両方を最も多く摂取したグループでうつ病のオッズ比が低かったことから、フラボノイド固有のメカニズムというよりも、果物全体が持つ抗酸化作用などの生物学的作用により、うつ病の発症に対して予防的に働いた可能性が考えられる。
一方、野菜や関連する栄養素とうつ病との関連は見られなかった。この理由は明らかではないが、野菜とうつ病に関連しているさまざまな要因を除外しきれなかったことなどが考えられる。
若者でも同様の結果なのかは不明、大きな集団でのさらなる研究が必要
同研究では、調査開始時点でのうつ病の情報を得られていないため、調査開始時点のうつ状態が野菜・果物の摂取量に影響を受けていた可能性が除外しきれないこと、中高年での結果なので若年者などにも当てはまるとは言えないことなどが限界点だ。
「果物摂取量が高いグループほどリスクの低下がみられたが、今回の結果を確かめるには、より大きな集団で行うなど、今後のさらなる研究が必要だ」と、研究グループは述べている。
▼関連リンク
・国立がん研究センター プレスリリース