原因不明の自己免疫疾患SLE、日本の患者数約6~10万人
東北大学は11月14日、皮膚細菌叢に対する表皮細胞の応答不良を原因とする黄色ブドウ球菌の皮膚生着数の増加が全身性エリテマトーデスの発症に関わっていることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科の皮膚科学分野の照井仁助教、山﨑研志臨床教授、浅野善英教授と相場節也名誉教授ら、国立がん研究センター先端医療開発センタートランスレーショナルインフォマティクス分野の山下理宇ユニット長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Science Immunology」電子版に掲載されている。
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全身性エリテマトーデスは自己免疫疾患のひとつであり、日本では、約6~10万人の患者が存在すると報告されている。その詳細な病因や病態はまだ十分に解明されていないため、その病態解明と治療開発が喫緊の課題となっている。
SLE自然発症マウスの皮膚で黄色ブドウ球菌「増」、症状悪化に関連
今回研究グループは、まず、自己免疫疾患を自然発症する遺伝子改変マウスの皮膚細菌叢を調べた。その結果、皮膚細菌叢のバランスが破綻しており、中でも黄色ブドウ球菌の数が増えていた。このマウスでは、黄色ブドウ球菌の増殖を抑制する抵抗力が低い、全身性エリテマトーデスに特徴的な自己抗体が産生されている、腎障害をきたしている、などの現象が見られた。また、これらの現象が、抗菌薬の全身投与により抑制され、黄色ブドウ球菌の皮膚への塗布により悪化することがわかった。この結果は、皮膚細菌叢のバランスの崩れと全身性エリテマトーデスの症状悪化に関連があることを示唆している。
黄色ブドウ球菌<皮膚好中球活性化<樹状細胞・T細胞活性化<IL-23・IL-17A放出
次に、黄色ブドウ球菌の皮膚に対する影響を検討した結果、黄色ブドウ球菌の皮膚塗布により皮膚に存在する好中球が活性化し、好中球細胞外トラップを形成していることが判明。好中球の活性化に連動し、樹状細胞とT細胞が活性化しインターロイキン23(IL-23)やインターロイキン17A(IL-17A)を放出し、全身性エリテマトーデスの症状を形成していることを見出した。また、これらの症状はIL-23やIL-17Aの働きを止める抗体を用いることで抑制されることがわかった。
スキンケアによる発症予防や、IL-23・IL-17Aをターゲットとした治療法開発の可能性
今回の研究で、自己免疫疾患に皮膚細菌叢が関わることが明らかとなり、さらにはIL-23やIL-17Aが全身性エリテマトーデスの治療ターゲットになることが示唆された。「皮膚細菌叢に対する抵抗力の低下と、全身性エリテマトーデスの発症との関連が発見されたことから、スキンケアが自己免疫疾患発症の予防になることが示唆される。また、全身性エリテマトーデスの症状を抗IL-23抗体や抗IL-17A抗体によって抑制できる可能性も明らかになった」と、研究グループは述べている。
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