手術用針のカウント間違え、針刺し事故などを防ぐ専用カウンター
国立国際医療研究センター(NCGM)は11月10日、デリスネコン合同会社と共同で開発した、手術縫合針計数装置「ラピッドニードルカウンター107」を上市したことを発表した。デリスネコンが特許を保持している手術縫合針計数装置を、医工連携事業の一環で、現場での操作性を高めた針カウンターとしてNCGMと共同で改良を重ね、確実な針のカウントと針刺し防止の安全性を向上させた。この開発は、NCGM病院消化器外科診療部の山田和彦部門長の研究グループと、デリスネコンの宮尾達也氏らが行ったもの。製造は医療機器製造を手掛ける株式会社英(はなぶさ)技研が担い、販売も同社が担当する。
画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)
手術で使用される組織縫合針は、スポンジ素材に刺して本数を確認する方法、またはマグネットを用いた針捨て箱に設置されたスポンジへ刺す方法、小さなブロック形状のスポンジを針の使用前の格納シートに貼り付けて、そのシート内から出して使用した針をそこに戻す(スポンジに刺す)方法といったように、現在はスポンジ素材に使用後の針を刺して、カウントしている方法が多く用いられている。しかし、針を戻す際にスポンジに刺して、後のタイミングで針カウントを行う状況では、スポンジから飛び出ている針に掌や指を刺してしまう針刺し事故が起きている。
また、スポンジに刺さっている針の本数を人の目で確認する場合、重複してカウントしていないかなど、正確性に欠く工程もある。目で追って、指で確認していくという行為自体が100%信頼できるものではない。どんなに目や指差しで確認しても針のカウントの間違えが起こっているとの報告もある。
針の紛失を防ぎ、針刺し事故を防止するといった医療安全の観点からも、現状のカウント方式よりも正確性を高め、より安全に針の処理をできる手術用針専用のカウンターが求められていた。
組織縫合後の針を、そのまま製品指定の針捨て口に、持針器ごとスライドイン
デリスネコンの宮尾氏は、手術室勤務時の直接介助において、手術針の運用に長く懸念を抱いていた。現場で実際に手術の針を扱う製品として現場での操作性を高めた針カウンターを設計し、英技研に製造を依頼した。長期にわたり、山田部門長の研究グループ、カウンター試用時の各手術を担当する看護師から手術室の現場における実践的な試用と考察、および製品機能向上の指導を受けながら、英技研で改良を繰り返した。そして、針使用の多い手術での使いやすい針カウンターが開発された。
開発製品「ラピッドニードルカウンター107」は、全体がSUS304ステンレスでできており、腐食の懸念もなく、いかなる手術の使用にも対応している。ボディ内部に針回収ボックスが設置でき、術後は針に直接触れることなく、破棄ができる。構造的には、術野から持針器ごと戻ってきた組織縫合後の針を、そのまま製品の指定する針捨て口に、持針器ごとスライドインさせる。持針器が製品底部についたら、針を把持している持針器のラチェットを外して開き、製品本体から持針器を手前に引き戻す。針は製品の針捨てボックス内に落下して格納され、ボディ前面に配置しているデジタルカウンターの表示が一つ進む。また、このカウントが成立するときに、電子音が鳴り、手術室の音響の中でも、針が処理されたことを聴覚的に確認できる仕組みになっている。この製品は針カウントを安全に行っていく医療補助材料に相当する。最終的には針捨てボックス内の針数が総使用数となる。
手術室全体での運用ルールを定め、安全な使用を
使用においては、洗浄滅菌の工程もあり、シンプルで壊れにくいものであることや、手術看護・管理上の運用で使用をカバーしていくことも必要であり、医療材料としてのカウント補助機材という位置付けで、現場に提案している。手術室全体での使い方の運用ルールに基づいて、安全に使用していくことが条件となっている。また、「スタッフによって間違った使用方法で使われた場合、カウントのミスが起こりえる懸念を完全に払拭することはできない」と注意も呼びかけている。
▼関連リンク
・国立国際医療研究センター プレスリリース