厚生労働省は9日、三環系抗うつ剤「アモキサピン製剤」から発癌性の疑いがあるN-ニトロソアモキサピンが検出された問題について、患者の自己判断で使用中止しないこと、同剤を服用中の場合は他の治療選択肢を薬剤師などが患者に改めて説明するよう求める通知を都道府県に発出した。
N-ニトロソアモキサピンの発癌性については、癌原性試験等のデータがなく動物における発癌性の有無は不明としている。アモキサピン製剤を製造販売するファイザーは「長期的服用による発癌性リスクは払拭できない」として、2023年2月に自主回収すると共に、出荷を停止する予定だ。
同社は10月25日に行われた薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会で、「同化合物と構造が類似しているニトロソアミン類を参考に検討したところ、アモキサピン製剤75mg、同300mgを一生涯70年間毎日服用、曝露した際の発癌リスクは、75mgでは20万人に1人、300mg投与では5万人に1人が過剰に発癌するリスクに相当する」との報告書を公表していた。
今回の通知では、アモキサピン使用による健康影響評価結果に加え、医薬品規制調和国際会議(ICH)M7ガイドラインで「おおよそ10万人に1人の増加のリスクは許容範囲」とされていることを記載し、医療機関に対して患者から相談を受けた場合に参考にするよう呼びかけた。
その上で、三環系抗うつ剤であるアモキサピン製剤は、服用の中止により離脱症状等を生じる可能性があるため、医療機関には患者の自己判断で服用を中止しないよう説明することや、現在服用中の場合は他の治療選択肢を医師や薬剤師が説明するよう求めている。