「カロママ プラス」による介入群と非介入群を比較
筑波大学は11月10日、食事や運動、睡眠などのライフログや健康診断結果を記録すると、AIが減量や健康維持のためのアドバイスをリアルタイムに届けるダイエットサポートアプリの使用における体重減量効果を、科学的に実証したことを発表した。この研究は、同大体育系の中田由夫准教授、株式会社リンクアンドコミュニケーションの佐々木由樹氏らの研究グループによるもの。研究成果は、「Nutrients」に掲載されている。
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近年、食事や運動などを記録し健康行動を改善することを目指した、携帯電話やスマートフォンで使用されるさまざまなアプリケーションソフト(アプリ)の開発が盛んになっている。また企業では、従業員の健康を重視した健康経営が注目されている。一方、このようなダイエットサポートアプリの体重減量効果は、必ずしも科学的に検証されていない。
今回研究グループは、過体重または肥満傾向にある20~65歳の企業の従業員141人を対象に、アプリを使うことで、体重減量の効果があるかどうかを検証した。研究で用いたアプリは、リンクアンドコミュニケーション社の「カロママ プラス」。同アプリは、医師や管理栄養士等の専門家の意見を取り入れ、エビデンスに基づいて制作されたもので、食事、運動、睡眠などの各種健康行動を記録することで、減量のために必要なアドバイスをAIが提示する仕組みになっている。
介入群は3か月間AIのアドバイスに従って、生活習慣の改善に取り組む
研究参加者を、ダイエットサポートアプリを使う群(介入群)と使わない群(対照群)にランダムに分け、介入群には3か月間、アプリを使用し、AIによるアドバイスに従って、生活習慣の改善に取り組んでもらった。対照群には、これまで通りの生活を続けてもらった。介入期間前後に、両群の体重等を測定した。なお、研究の実施期間は、2020年12月1日~2021年2月22日の新型コロナウイルス流行下であったことから、研究参加者に対する説明会や調査をすべてオンラインで実施する「非接触型」で実施した。
介入群は1.6kg多く減量、アプリ使用が体重減量に有効であることを実証
介入期間前後の比較を行ったところ、介入群では−2.4±4.0kgの体重変化が見られた一方、対照群では−0.7±3.3kgに留まった。関連する複数の変数で調整した共分散分析の結果、両群間には−1.60kg(95%信頼区間−2.83~−0.38kg、p=0.011)の有意な群間差が認められた。
また、歩数について比較した結果、介入群で−401±3,613歩、対照群で−1271±2,391歩となり、両群ともに介入期間中の減少が見られた(群間差922歩、95%信頼区間−21~1,865歩、p=0.055)。これは、緊急事態宣言などの影響により、外出や運動が制限されたことが影響したと考えられる。しかし、歩数の減少量は介入群の方が少なく抑えられていた。
アプリを活用した肥満の予防と改善が期待される
ダイエットサポートアプリが提供するAI自動生成のアドバイスは、専門家を直接介さないため、低コストで健康行動を促すことができる。専門的な栄養指導や運動指導は、費用が掛かることなどを理由に特定の人しか受けられない状況。アプリが安価で幅広く提供されることは、肥満の予防と改善につながると考えられる。「今後、今回のデータをさらに解析するとともに、最適なアドバイスの提供タイミングについても検討し、アプリによる健康管理の可能性について、より詳細に検証を進める予定」と、研究グループは述べている。
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・筑波大学 TSUKUBA JOURNAL