次第に体の自由が奪われていく難病、縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー
東北大学は11月4日、縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(GNEミオパチー)におけるアセノイラミン酸の治療効果を明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科神経内科学分野の青木正志教授、国立精神・神経医療研究センター病院脳神経内科の森まどか医長、名古屋大学大学院医学系研究科総合医学専攻脳神経病態制御学(兼 医学部附属病院神経内科)の勝野雅央教授、大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻の髙橋正紀教授、熊本大学病院の山下賢准教授(現 国際医療福祉大学成田病院教授)らの研究グループによるもの。実施した医師主導第2/3相試験、ノーベルファーマ株式会社が治験依頼者となる有効性確認試験の結果は、2022年11月3日の「第40回日本神経治療学会学術集会」で発表された。
GNEミオパチーは、多くは10歳台後半から30歳代にかけて出現し、体幹から離れた部位から筋肉が萎縮、変性し次第に体の自由が奪われていく有効な治療法のない希少疾病である。日本の患者数は400名程度と推定され、指定難病の一つに数えられている。1981年世界に先駆けて臨床病型が報告され、2001年に、その原因遺伝子がシアル酸代謝に関わることが見いだされ、モデルマウスでシアル酸補充療法の予防効果が示された。
アセノイラミン酸治療薬開発について、医師主導第2/3相試験と有効性確認試験の結果を発表
これを受けて研究グループは、2010~2011年に、世界で初めて医師主導治験として第1相試験を実施し、その後、医師主導第1相試験(追加)を実施、シアル酸の一種であるアセノイラミン酸の治療薬としての開発を進めてきた。今回、研究グループは、GNEミオパチーにおけるアセノイラミン酸の効果を明らかにし、医師主導第2/3相試験および有効性確認試験において同様の成績が得られたことを伝えた。
プラセボ群と比較して48週時点の上肢筋力の悪化を抑制
医師主導第2/3相試験結果として、歩行可能なGNEミオパチー患者20例(うち6分間歩行試験の歩行距離200m以上が18例)に本剤1日6gを投与したプラセボ対照二重盲検試験において、本剤群ではプラセボ群と比較して48週時点の上肢筋力合計点数の低下(悪化)が抑制された。
有効性確認試験でも同様の成績を確認、薬事承認申請を準備
また、有効性確認試験結果として、GNEミオパチー患者14例に同剤1日6gを投与したプラセボ対照二重盲検試験において、同剤群ではプラセボ群と比較して48週時点の上肢筋力合計点数の低下(悪化)が抑制された。
結論として研究グループは、「本研究は、難病である遠位型ミオパチーに対する治療法を初めて提示することができた重要な報告である。ノーベルファーマ株式会社にて薬事承認申請を準備している」と、述べている。
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