1歳時の発酵食品摂取頻度と1歳/3歳時の睡眠時間との関連を6万5,210組で調査
富山大学は11月2日、子どもの発酵食品(ヨーグルト・チーズ)の摂取頻度と、1歳時点と3歳時点の子どもの睡眠時間との関連を調べた結果、1歳時点におけるヨーグルトの摂取頻度が高いと3歳時点における睡眠不足のリスクが減る傾向が認められたが、それ以外では差が認められないことを明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学薬学教育部生命・臨床医学専攻博士課程の井上真理子氏らのグループによるもの。研究成果は、「BMC Pediatrics」にオンライン掲載されている。
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日本の子どもの睡眠時間は他の国に比べると短いと報告されており、乳幼児期の睡眠不足は、肥満、学力・空間認識能力の低下や多動につながると言われている。
一方、発酵食品の積極的が摂取は腸内細菌叢に変化を与えること、腸内細菌叢の多様性は覚醒・睡眠リズムを良好にすることが知られている。研究グループは以前、妊娠中に味噌汁を多く摂取していた母親から生まれた子どもは1歳時点において、妊娠中にチーズを多く摂取していた母親から生まれた子どもは3歳時点において、睡眠不足のリスクが低くなることを報告している。しかし、子どもが成長するにつれて、子ども自身が食べた物も睡眠時間に影響することが予測される。
そこで研究グループは今回、「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」に参加している妊婦とその子ども(6万5,210組)を対象に、離乳食として摂取した1歳時点のヨーグルトおよびチーズの摂取頻度と、1歳時点と3歳時点における子どもの睡眠時間との関連を調べた。
1歳時点のヨーグルト摂取頻度が高いと、3歳時点の睡眠不足のリスクが減少傾向
子どもの睡眠時間は、米国の「National Sleep Foundation」が示した1日の推奨睡眠時間をもとに、1歳時点の睡眠不足を「11時間未満」、3歳時点の睡眠不足を「10時間未満」と設定。子どものヨーグルトの摂取頻度が最も少ない群を基準(1.0)として、ヨーグルトの摂取頻度と睡眠不足の頻度を比較した。
その結果、1歳時点におけるヨーグルトの摂取頻度と3歳時点における睡眠時間においては、傾向検定が有意であったものの、有意な群間差は認められなかった。一方、それ以外の条件で摂取頻度と睡眠時間との関連は見られなかった。
ヨーグルトの積極的な摂取が子ども自身の睡眠時間と関連するとは結論付けられず
子どもの腸内細菌叢は、3歳前後で成人と同様の組成になると言われており、母親由来の腸内細菌叢が子どもに長期的に受け継がれることはすでに報告されているが、同研究からは、子どものヨーグルトの積極的な摂取が子ども自身の睡眠時間と関連すると結論付けることはできなかった。
しかし、覚醒・睡眠リズムを適切に調節するためには腸内細菌叢が必要と言われており、子どものヨーグルトの積極的な摂取が睡眠に良い影響をもたらす可能性や、子どもの成長とともに子ども自身が食べる物の影響を受ける可能性は否定できなかった。
長期観察などで、子どものヨーグルト摂取と睡眠時間との関係を確認していくことが重要
今回の研究結果は、これまでに報告がない新規性が高い情報だ。しかし、観察研究であるため、「因果関係まで扱えていない」「腸内細菌叢を直接測定できていない」「ヨーグルトやチーズの摂取については頻度に基づいており、摂取量がわからない」などの限界が挙げられる。
今後はさらに長期的な観察を行うなど、子どものヨーグルトの摂取と睡眠時間との関係について確かめていく必要がある、と研究グループは述べている。
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・富山大学 プレスリリース