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アルツハイマー型認知症、在宅に比べ施設入所者は「睡眠障害」が多いと判明-筑波大

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2022年11月01日 AM10:36

生活している場所により、認知症の「」の現れ方は異なるのか?

筑波大学は10月31日、施設入所中のアルツハイマー型認知症患者は在宅の患者に比べて睡眠障害が多いことを明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学医療系の新井哲明教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Psychogeriatrics」に掲載されている。

認知症は、高齢化が進む日本において対処するべき重大な疾病の一つであり、2025年には患者数が700万人に達すると予測されている。認知症になると多くの場合、記憶障害のような中核症状に加え、「認知症の行動・心理症状(Behavioral and psychological symptoms of dementia:BPSD)」と呼ばれるさまざまな精神症状や行動症状が出現する。アルツハイマー型認知症や、その関連疾患では、90%以上の患者に少なくとも1つ以上のBPSDが存在するという報告もある。そして、このBPSDが生じる原因は、生物学的なものや心理学的なもの、社会的なものなどさまざまであると考えられる。BPSDは患者だけでなく、その家族・介護者の生活の質にも大きな影響を与える上、医療費や介護者の負担増にも関連する。

BPSDの治療にはしばしば薬剤が用いられるが、高齢者においては、薬剤の副作用が出やすいというリスクが指摘されており、生活リズムの改善や感覚への刺激を増やすといった治療が望ましいとされている。介護者の負担を軽減するためには、より効果的なBPSDへの対処法の確立が望まれるが、認知症患者は周囲の環境に強く影響を受けることが知られているにも関わらず、生活環境、つまり、自宅で生活している場合と施設で生活している場合で、BPSDの現れ方がどのように異なるかは十分に明らかにされていなかった。

対象の130人のアルツハイマー型認知症患者のうち72人が在宅介護、58人が施設介護

研究グループは、茨城県内の介護施設745施設に質問票を送付し、普段から認知症患者のケアや介護に携わっている医療従事者を対象としたアンケート調査を実施した。2016年4月1日~2017年3月31日までにBPSDで対応を要した患者について最大5人までの回答を依頼し、患者の性別や年代、診断、介護度、BPSDの種類等を尋ねた。

その結果、56施設から371人の患者に関する回答があり、そのうちアルツハイマー型認知症の診断を受けている130人を解析対象とした。さらに、自宅で生活している患者(在宅介護群)と施設で生活している患者(施設介護群)の2群に分け、背景因子やBPSDの有無や、居住形態とBPSDの関連性を調べた。解析対象130人のうち、72人が在宅介護群、58人が施設介護群に該当。背景因子である性別、年代、介護度はいずれも群間差を認めなかった。

BPSDのうち「」のみが施設介護群で有意に多いと判明

分析の結果、BPSDに関しては、睡眠障害のみが施設介護群で有意に多いことが明らかになった(施設介護群60.3%vs在宅介護群33.3%、p=0.003)。また、性別や年代、介護度、効果量が一定以上であったBPSDに着目して、居住形態との関連を調べたところ、居住形態と性別や年代、介護度には関連が認められなかったが、BPSDのうち睡眠障害のみが有意な関連を示した(オッズ比:2.529、p=0.038)。

これらの結果から、睡眠障害は、自宅よりも施設で生活しているアルツハイマー型認知症患者において多く観察されることが明らかとなった。

高齢者に対する睡眠薬の不適切な使用にも注意が必要

今回の研究デザインでは因果関係を明らかにすることはできないが、「睡眠障害を呈している患者は施設に入所しやすい」「施設に入所することが睡眠障害を誘発しやすい」「認知症患者のケアや介護に携わっている医療従事者は施設で生活している患者の睡眠障害を問題視しやすい」「自宅で生活している患者の睡眠障害を軽視しやすい」などの理由が考えられるという。

施設での生活においては社会的接触や活動性が低くなり、睡眠への影響が生じやすい可能性や、施設では少人数のスタッフが認知症患者をケアしているため、夜間の徘徊や転倒は深刻な問題として捉えられ、睡眠障害がより問題視されやすいなど、施設特有の要因があると推測される。高齢者に対する睡眠薬の不適切な使用は大きな問題にもつながることから、このような要因に対しても注意を払う必要があると考えられる。

今後、回答者の主観を含まないデータでより詳細に検討予定

居住形態とBPSDの関連性の背景にあるメカニズムについて理解を深めることは、BPSDへの有効な対処法の確立に寄与するものと考えられるが、今回の研究は、普段から認知症患者のケアや介護に携わっている医療従事者を対象としたアンケート調査に基づいており、回答者の主観がバイアスとなっている可能性がある。

「今後、このようなバイアスを含まない形でデータを収集し、居住形態とBPSDの関連性について、より詳細に検討する予定だ」と、研究グループは述べている。

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