■労組団体が訴え
医薬品・医療機器メーカー、医薬品卸の労組団体からなるヘルスケア産業プラットフォームは27日、参議院議員会館で会合を開き、超党派議員に対し、医薬品供給が不安定になっていることで医薬品卸の現場では過重な需給調整業務が発生し、適切な価格交渉ができていない恐れがあるとして「中間年改定を実施すべきではない」と訴えた。MSの精神的・身体的負担が大幅に増加し、早急に供給不安問題に対策を打つ必要性も強調。物価高でも価格転嫁できない状況を挙げ、改定を見送り「しかるべき支援、制度改定が必要」とし、現場と産業そのものの疲弊への理解と対策の検討を呼びかけた。
会合には170人弱が出席した。国会議員・秘書の出席者は計97人で、そのうち52人が議員本人。政党別には自民党17人、立憲民主党17人、国民民主党14人、日本維新の会2人、無所属3人。今回、創薬国の地位の低下、供給不安などの「課題報告会」と位置づけて開催し、日本製薬団体連合会、日本医薬品卸売業連合会、日本CMO協会の協賛を得て、「業界としてワンボイス」で業界や労働現場の苦境を伝える機会を作った。
ヘルスケア産業プラットフォームは、9月にMS1493人(未加盟労組含む)から回答を得た医薬品流通の課題・実態アンケートを説明。84%が1日で最も時間を割いている業務は「医薬品の供給不安に伴う出荷調整業務」だった。価格交渉の佳境にあるはずの9月にも関わらず、最多業務に価格交渉を挙げたのは10%だった。
同プラットフォームは、「このような状況下に行われた薬価調査結果は、本来求められる市場実勢価格とは乖離しているのではないか。大変危惧している」と指摘。「制度の趣旨を逸脱した薬価引き下げを許容することになり、中間年改定は実施すべきではない」と訴えかけた。
アンケートには、出荷調整に対し「1商品に1時間費やすこともある」「通常業務に支障を来している」「多大な時間を割いても何も利益は出ない」「流通改善も進まない」といった回答が寄せられた。
また、MSの現場については「退職者が続出し、事業継続が危ぶまれる」「仕事へのやりがいを感じず辞める人が増えている」「MSや電話越しに卸の事務に対して恫喝や取引を盾にしたカスタマーハラスメントが起きている」「若い人材の離職やメンタル不良になった人がいる」などの声が寄せられた。
会合では、CMO協会から原材料・燃料等の高騰が事業継続を難しくしていることも報告された。日薬連からは、中間年改定の慎重な検討や「医薬品原薬の国産化に必要な経済支援」などの要望を政府に行っていることが説明された。