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日本人の遺伝性脳小血管病の遺伝子異常の頻度を解明、診断アプローチも提唱-新潟大

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2022年10月28日 AM10:30

日本人の重い脳小血管病の臨床情報、遺伝子検体などを解析

新潟大学は10月26日、日本人の重い脳小血管病の背景にある遺伝子異常の頻度について調査し、その結果、遺伝性の背景がある人の90%以上はNOTCH3、HTRA1およびABCC6の3遺伝子によることを発見したと発表した。この研究は、同大脳研究所脳神経内科学分野の上村昌寛非常勤講師、小野寺理教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Neurology, Neurosurgery and Psychiatry」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

脳の血管には、太い血管と、細い血管がある。この脳の細い血管の異常は、高齢者で多く、この血管が痛むと、頭の回転の悪さや、歩行時のふらつきなどを起こす。これらを総称して脳小血管病と呼び、脳血管性の認知症の一部とされている。脳小血管病は加齢が最大の危険因子であるが、何故、この血管が傷む人と傷まない人がいるかはわかっていない。

一方、遺伝子の異常で、脳小血管病が起こることが知られている。これらの遺伝性脳小血管病は、NOTCH3変異で生じる皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体顕性脳動脈症()や、HTRA1変異で生じる禿頭と変形性脊椎症を伴う常染色体潜性白質脳症(CARASIL)が代表的だ。しかし、これらは大変まれと考えられていた。

研究グループは、日本全国の施設から重い脳小血管病症例の臨床情報・画像情報、および遺伝子検体を収集。それらの情報から、発症年齢が55歳以下をGroup1、56歳以上で発症し家族歴を認めた人をGroup2に分類した。収集した全検体に対して、NOTCH3とHTRA1の遺伝子検査を実施した。NOTCH3とHTRA1の遺伝子変異を認めなかった検体に対しては、追加で全エクソン解析を実施し、脳小血管病の原因遺伝子に異常がないかを検討した。

主な変異は3遺伝子、NOTCH3が60%、HTRA1が22%、ABCC6が12%

対象患者は106例(Group1:75例、Group2:31例)で、50人に何らかの遺伝子変異を認めた。認められた遺伝子変異としては、NOTCH3が60%と最も多く、続いて、HTRA1が22%、ABCC6が12%だった。これら3遺伝子の変異を合計すると94%となり、日本人の遺伝性脳小血管病の原因遺伝子のほとんどはこれら3遺伝子が占めていることが明らかとなった。

ABCC6変異は皮膚や眼病変、時に脳梗塞を引き起こす弾性線維性仮性黄色腫(指定難病166)という常染色体潜性遺伝性疾患の原因遺伝子である。今回、この変異が顕性でも脳小血管病を起こしうることを見出した。

「第一度近親の家族歴」「」「発症年齢」の情報がスクリーニングに重要

続いて、Group1を決定木という手法を用いて、臨床症状や画像情報から遺伝性脳小血管病症例と診断のつかなかった例(未診断症例)を分類可能か試みた。結果、第一度近親の家族歴、高血圧、発症年齢≦43歳という3つのノードを使って4つのグループに分類することができた。

グループ別でみると、1)第一度近親の家族歴がなく、高血圧を認めるグループと、2)第一度近親の家族歴がなく、高血圧を認めず、発症年齢>43歳のグループでは、遺伝性脳症血管病の頻度は20~33.3%と少なく、認められた疾患はCADASILとヘテロ接合性HTRA1関連脳小血管病のみだった。しかし、3)第一度近親の家族歴がなく、高血圧を認めず、発症年齢≦43歳のグループと、4)第一度近親の家族歴のあるグループでは、遺伝性脳小血管病を70%以上認め、CADASILやヘテロ接合性HTRA1関連脳小血管病以外にも複数の疾患を認めた。

これらの結果から、日本人では遺伝歴を問わず、一定数、遺伝性の脳小血管病が存在すること、遺伝性脳小血管病はNOTCH3、、ABCC6の3遺伝子でほとんど診断可能であること、遺伝性脳小血管病患者のスクリーニングには「第一度近親の家族歴」「高血圧」「発症年齢」の3つの情報が重要であることが明らかになった。以上の結果を踏まえ、研究グループは日本人における遺伝性脳小血管病の診断アプローチを新たに提唱した。

遺伝子異常が関連する病態に応じた最適な診断・診療の開発に期待

研究により、日本人脳小血管病の背景にある遺伝子としてHTRA1とABCC6が高頻度に認められることが明らかとなった。近年、HTRA1は遺伝歴のない脳小血管病にも影響することが知られるようになり、脳小血管病の重要な危険遺伝子として世界中で関心が高まっている。一方、ABCC6は弾性線維性仮性黄色腫の原因遺伝子として知られていたが、脳小血管病との関連性については十分に明らかとなっていない。「今後は変異している遺伝子が関係する病態に応じた最適な診断・診療の開発が可能になると考えられる」と研究グループは述べている。

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