目のつらいかゆみと病原性記憶T細胞との関係は?
千葉大学は10月25日、重症慢性アレルギー性結膜炎の目のかゆみのメカニズムを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学研究院免疫発生学の中山俊憲学長、平原潔教授ら、順天堂大学医学部附属浦安病院眼科の海老原伸行教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Immunity」にオンライン掲載されている。
画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)
アレルギー性結膜炎は、日本では全人口の約半数の国民が悩まされているとされる疾患であり、主な症状はかゆみ、充血や流涙だ。かゆみは長引くと、睡眠不足やうつを引き起こし、生活の質を著しく低下させるため、かゆみをコントロールすることは治療の重要なポイントとなる。また、病原性記憶T細胞という細胞が関与していると重症になりやすく慢性の経過をたどる。しかし、アレルギー性結膜炎における目のつらいかゆみと病原性記憶T細胞との関係は、わかっていない。
そこで今回の研究では、結膜における病原性記憶T細胞のはたらきを詳しく調べることにより、つらいかゆみが誘導される仕組みを明らかにした。
病原性記憶T細胞産生のCGRPがかゆみを誘導、アレルギー性結膜炎モデルマウスで
まず、マウスにアレルギー性結膜炎を引き起こす主なアレルゲンであるダニ抗原を複数回点眼投与することで、強いかゆみを伴うアレルギー性結膜炎を誘導。この結膜には神経線維が伸びてくることが観察された。
続いて、アレルギー性結膜炎を誘導したマウスの結膜中の病原性記憶T細胞を詳しく調べたところ、かゆみ誘導物質であるタンパク質CGRPを多く作っていた。その仕組みとして、炎症を引き起こすIL-33というタンパク質が免疫細胞を刺激し、CGRPの分泌を促すことによって、目のかゆみが引き起こされることが明らかとなった。CGRPのはたらきを抑える薬を投与すると、掻き行動が抑制され、目のかゆみは著明に減った。さらに、病原性記憶T細胞が分泌するCGRPだけをなくすと目のかゆみが減ったという。これらのことから、アレルギー性結膜炎において、病原性記憶T細胞が産生するCGRPがかゆみを引き起こすことがわかった。
患者の結膜にもCGRP産生の病原性記憶T細胞が多数存在
最後に、アレルギー性結膜炎患者の結膜でCGRPを産生する病原性記憶T細胞が多く存在することを明らかにした。
偏頭痛治療に用いられているCGRP阻害薬、応用に期待
アレルギー性結膜炎の治療は抗ヒスタミン点眼、ステロイド点眼や免疫抑制薬点眼があるが、いずれでもコントロールできない難治性のかゆみがある。今回の研究により、IL-33の刺激を受けた病原性記憶T細胞が産生するCGRPが目のかゆみを引き起こす重要な物質であることが明らかとなった。今後は、IL-33やCGRPをターゲットにすることにより、難治性のかゆみの治療薬として応用される可能性がある。CGRP阻害薬(ガルカネズマブ、フレマネズマブ、エレヌマブ)はすでに偏頭痛の治療に使われており、慢性の目のかゆみに効く安全な薬剤が早期に開発されることが期待される、と研究グループは述べている。
▼関連リンク
・千葉大学 プレスリリース