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5G通信を用いた山間部過疎地での遠隔超音波検査・遠隔リハビリの実証実験-名大ほか

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2022年10月27日 AM11:17

5G通信とLTEで比較

名古屋大学は10月25日、山間部の高齢化過疎地において、5G通信による携帯型超音波検査装置を用いた遠隔医療、および遠隔リハビリテーションについて実証実験を行い、従来のLTE(Long Term Evolution)と比べた検証結果を発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科人間拡張・手の外科学/医学部附属病院先端医療開発部の佐伯将臣特任助教、予防早期医療創成センターの大山慎太郎准教授、人間拡張・手の外科学の米田英正助教、個別化医療技術開発講座の平田仁特任教授らの研究グループと、愛知県新城市、、株式会社NTTデータ経営研究所、株式会社 、ニプロ株式会社との共同研究によるもの。研究成果は、「Digital Health」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

日本における高齢者人口率はこれまでに無いほど高く、その増加は日本のみでなくグローバルに進むと見込まれている。高齢化地域の問題は、医療や看護を必要とする人口の増加、および、特に人的な医療リソースが限られることにある。革新的な技術は、医療・健康領域に多くの利益をもたらしてきたが、いまだ環境や経済的理由により医療資源にアクセスする機会の格差がある。

一方、近年の情報およびコミュニケーションに関するテクノロジーの進歩は目覚ましく、地域間での医療アクセスの不均衡を減少させることが期待されている。5G通信システムは、大容量、低遅延の情報伝送が可能であり、医療・健康領域を含め多領域においてその活用が進められている。山間部過疎地域においては、医療業務の効率化や遠隔医療や技術指導、健康管理などへの活用が期待されている。

中核病院に滞在する医師・理学療法士の指示のもと、山間部の診療所で実施

今回の実証実験は、同大が2018年に健康寿命や労働寿命の拡大で、高齢者が活躍できる社会の実現を目指して包括研究協定を締結し、また、平田特任教授が立ち上げ、リーディングし、産学官民で次世代の医療・健康ソリューションの創出に取り組んでいる「奥三河メディカルバレープロジェクト」の主なフィールドである愛知県新城市において行われた。

過疎地域の中核病院と山間部の診療所の間で、5G通信システムを用いて、携帯型超音波画像診断装置を使用した遠隔医療、および遠隔リハビリテーションを実施した。遠隔医療では、診療所にいる検査技師が模擬患者を対象に携帯型超音波のプローブを操作し、中核病院に医師に滞在する医師がプローブの操作など、検査における指示と観察を行った。遠隔リハビリテーションでは、中核病院の理学療法士が、地域住民5人を対象としてリハビリテーションを実施。両実証において、5GとLTEのそれぞれで、医師または理学療法士が映像の質と伝送遅延への主観的評価を行った。

通信環境が医師や理学療法士の主観的評価に影響することを確認

携帯型超音波画像診断装置を用いた遠隔医療については2人の医師が評価した。遅延において、5Gでは「許容範囲」と「どちらかといえば許容範囲」の回答であり、LTEでは2人とも「許容範囲ではなかった」と回答した。

遠隔リハビリテーションでは、評価した7人のうち、5Gで6人が4K画質の伝送において「品質はよかった」と回答し、LTEでは3人のみだった。遅延に関しては、5Gでは5人が「許容範囲だった」と回答し、LTEでは1人のみだった。

これらの結果から、5G通信システムを用いることで、携帯型超音波画像診断装置を用いた遠隔医療や遠隔リハビリテーションを低遅延で高質の映像などの情報を用いて実施することが可能であり、実際に医療を実施する医師や理学療法士の主観的評価にも影響することが確認された。

今後は、技術の高度化を評価するだけでなく、医療従事者や患者に与える価値でも評価を

研究グループは、今回の研究結果を踏まえ、「今後、医療・健康領域における技術革新を、技術の高度化を評価する指標のみでなく、医療従事者や患者に与える価値で評価し、高齢化が進む山間部過疎地域における医療・健康領域においてhuman-centered(ステークホルダーへの価値の提供を基軸とすること)を重視した課題解決に取り組みたい」と、述べている。

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