医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医薬品・医療機器 > 人工股関節置換手術支援ロボット「ROSA Hip」を導入、アジア地域で初-藤田医科大

人工股関節置換手術支援ロボット「ROSA Hip」を導入、アジア地域で初-藤田医科大

読了時間:約 3分16秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2022年10月25日 AM10:42

神経外科・整形外科の手術支援ロボット「ROSA」

藤田医科大学は10月24日、米国ジンマー・バイオメット社が開発した人工股関節置換手術支援ロボット「 システム」をアジア(※オーストラリアを除く)で初めて導入したことを発表した。導入したのは、同大病院と同大ばんたね病院。ばんたね病院の整形外科で10月22日に1例目の人工股関節置換術を実施し、良好な成績だったことも併せて発表した。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

「ROSA」は、2007年にフランスで開発された神経外科領域・整形外科領域の手術支援ロボット。藤田医科大学病院は、2020年9月に人工膝関節置換術用の「ROSA Kneeシステム」を導入。2022年9月末までに290例の置換術に成功している。膝関節置換術用の「Kneeシステム」に加え、同じロボットに新たに人工股関節用の機能が追加されたものが、今回、両病院に配備された「ROSA Hipシステム」だ。

「ROSA Hip」による人工股関節置換手術は保険適応

同システムは、人工股関節の股関節側インプラントの設置角度サポートや両脚のバランスのズレを計測し最適なインプラントを選択できる機能など、正確なナビゲーション機能で手術中の執刀医をサポートするのが特長。これまで術者の経験にゆだねられていたインプラントの設置をロボットがアシストすることによって、より低侵襲で合併症リスクの少ない手術を可能としている。「ROSA Hipシステム」による人工股関節置換手術は保険適応となる。

インプラントの設置角度をミリ単位、1度単位で設定可能

「ROSA Hip」の機能についてより具体的に挙げると、次のような点がある。通常手技に近い感覚で術者の自由度が高く、効率的にロボットのサポートを受けられる。その一方で、経験やイメージではなく数値で示されることで、これまで気づかないような誤差の範囲を数値として可視化。蓄積された数値をフィードバックすることで、より安全・安心な手術が可能となる。

また、両脚のバランス差を測定する機能があり、術中の状況を見ながら最適なインプラントの選択が可能になる。ナビゲーションやロボットで使われるピンが不要で低侵襲でのオペが可能。インプラントの設置角度を「1.0度」「1.0mm」といった細かい単位で設定できることや、一般的な側臥位(横向き)ではなく、仰臥位(仰向け)でアプローチすることによって、最小侵襲手術と呼ばれるMIS法との併用が可能となり、より低侵襲な手術が実現できることも挙げられる。

さらに、通常、CT撮影での術前計画をX線撮影で実施するため、患者の被ばくリスクが軽減されることや、熟練度にかかわらず安全で正確な手術が可能にとなり技術の平準化が図れること、「ROSA Knee」の本体に、人工股関節置換術のシステムをインストールし、ハンドル部分を入れ替えることで、人工股関節置換術のサポート機能を追加することが可能になる、といった特長もある。

術者の熟練度にかかわらず良好な手術成績が期待される

人工股関節置換術は、保存療法を行っても十分な効果が得られない場合や、重度の変形性股関節症および先天性の股関節形成不全の患者などを対象に、最も多く選択されている治療法である。股関節の損傷している部分を人工股関節に置き換えることで、痛みを取り除き、歩く力を取り戻すことを目的としている。

人工関節がもとの関節のような自然な動きをするには、(人工関節)を正確な角度で骨盤に設置することが大切だ。しかし、一人ひとり顔が違うように関節の形も人によってそれぞれ異なるため、手術は術者の経験によるところが大きく、インプラントの設置角度や筋肉・腱といった軟部組織への侵襲程度などによって患者の予後に差が出ることが課題となっていた。手術支援ロボットは、正確性が担保されることで、術者の熟練度にかかわらず良好な手術成績が期待できる。

MIS法+ロボット支援手術でより体への負担を少なく

同大整形外科では、MIS法(最小侵襲手術)と呼ばれる術式による人工膝・股関節置換術に積極的に取り組んでいる。同術式は、筋肉・靱帯・腱など関節の周辺組織に可能な限りメスを入れず行うため、従来の術式と比べて痛みが少なく回復が早い、筋肉を切らないため術後早期の脱臼が少ない、可動域が制限されないためスポーツへの復帰等も可能、従来法の約半分ほどの切開で済むため審美的に優位などのメリットがある。

一方、同術式は難易度が高く、専門的な知識と高度なテクニックが必要という課題もある。同術式にロボット支援手術を組み合わせることで、これらの課題を克服し、さらなる低侵襲手術の普及およびそれによる患者のQOL向上に貢献していくことを目指す。

人工股関節置換術の件数は年々増加傾向にあり、全国で年間約7万例にのぼる。手術を受ける患者は若年化しており、より高い術後のQOL向上が求められている。「患者が術前と変わらない生活を送れるよう、当院では術者の技術向上と並行してロボット支援手術の導入を進め、低侵襲で合併症リスクの少ない手術を実践することで、健康寿命の延伸に寄与していきたいと考えている。また将来的には、本学のサージカルトレーニングセンターで「ROSA」の実践的なプログラムが受講できるよう準備を進め、未来を担う整形外科医の育成にも取り組んでいきたい」としている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医薬品・医療機器

  • ジョンソン・エンド・ジョンソン 肺がん領域に初参入
  • レポトレクチニブ「がん細胞が耐性を獲得しにくく、長期使用に期待」
  • 2025年1月より社長交代で新たな体制へ‐アレクシオンファーマ
  • ミリキズマブの炎症性腸疾患に対する長期持続的有効・安全性データを公開-リリー
  • 転移性尿路上皮がん、一次治療における新たな選択肢への期待