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「自宅見取り図」による転倒予防指導、退院後早期の高齢者で有用な可能性-大阪公立大

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2022年10月24日 AM10:30

先行研究で退院後1か月までの転倒予防効果を確認、1か月以上の効果は?

大阪公立大学は10月20日、急性期病院に整形外科疾患で入院している転倒歴のある65歳以上の高齢者60人を対象に、一般的な運動療法のみのグループ30人(対照群)と、運動療法に加え退院時に自宅見取り図を用いた転倒予防指導を行ったグループ30人(介入群)に分け、退院後の転倒およびヒヤリハットの発生について6か月間の追跡調査を行い、その結果を発表した。この研究は、同大大学院リハビリテーション学研究科の上田哲也助教らの研究グループによるもの。研究成果は「International Journal of Environmental Research and Public Health」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

転倒は、高齢者にとって健康寿命や生活の質の維持・向上を阻害する要因であり、急性期病院からの退院患者は、地域在住高齢者に比して転倒発生率が高いと報告されている。また、退院患者の転倒場所は、屋外よりも屋内での転倒発生率が高く、特に居間・寝室・台所・浴室等の日常生活で使用する頻度が高い場所で転倒することが多い。転倒要因は一般的に内的要因と外的要因に分けられ、地域在住高齢者に対する転倒予防介入としては、内的要因単独での介入や外的要因単独での介入、また近年では内的要因および外的要因を組み合わせた多要因への介入の有効性が確立されてきている。従来、急性期病院では下肢筋力強化、動的バランス、応用的な歩行練習等の内的要因に重点をおいた転倒予防指導は行われてきたものの、患者宅を訪問し家屋評価による転倒リスクを改善する外的要因の介入併用は、実現可能性の低い方法だった。

研究グループは、2017年発表の調査で、急性期病院の退院患者に対する外的要因への転倒予防介入として、患者が描いた自宅見取り図上で家屋評価を行い、転倒リスクの高い屋内箇所の改善方法を指導したところ、1か月までの転倒予防効果を確認していた。自宅見取り図を用いた転倒予防指導は、退院患者の身体機能に関する評価・治療に加え、自宅訪問に依らない簡易な住環境へのアプローチ方法として臨床的な有用性が高いと考えられる。しかし、自宅退院した患者の40~50%が6か月以内に転倒しており、自宅見取り図を用いた退院前の転倒予防指導の効果が、果たして退院後1か月以降も持続するのかを確認する必要があった。そこで今回の研究は、入院中の高齢患者に対して、退院前に自宅見取り図を用いた転倒予防指導を行うことで、長期的な再転倒予防効果が得られるかを検証することを目的とした。

患者個人宅ごとの転倒リスク因子に対する改善方法を指導

急性期病院の整形外科病棟に入院した65歳以上の高齢者のうち、過去一年間に転倒歴があり、移動能力は屋内自立レベル(歩行補助具の有無不問)にて自宅退院する60人を対象にした。研究への同意を得られた対象者を、無作為に対照群と介入群へそれぞれ30人ずつとなるよう割り付けし、自宅退院までに介入を行った。

退院前の指導は、自宅退院前日および当日に対象者本人に対して行った。対照群には、疾患特性に応じた一般的な運動療法を自主トレーニングプログラムとして退院前に指導した。介入群には、対照群と同様の自主トレーニング指導に加え、対象者の自宅見取り図を用いて、生活動線上にある既知の転倒リスク因子(段差、滑りやすい敷物や履物、十分な明るさがない暗所、整理整頓されていない場所)に対して、転倒予防に効果的とされる改善方法を、患者の自宅に応じて個別に助言した。退院後、追跡調査として、自宅内での転倒および転倒のヒヤリハットを、退院後6か月間行った。

転倒は2か月間、ヒヤリハットは3か月間の効果を確認

対象者60人のうち、6か月の追跡調査が完了したのは51人(追跡率85%)だった。転倒は、2か月間で、対照群において7.7%発生したのに対し、介入群では発生しなかった。2か月以降は介入群でも転倒がみられ、両群間で有意差はみられなかった(Kaplan-Meier法で比較分析を実施)。なお、両群ともに、転倒に伴う怪我や外傷などの有害事象は発生しなかった。また、ヒヤリハットは、3か月間で介入群が有意に少なかった(p<0.05)が、3か月以降は両群間で有意差はみられなかった。

退院後の介入も要検討、多施設共同介入研究の実施へ

今回の研究により、自宅見取り図を用いた再転倒予防介入は、転倒および転倒のヒヤリハットともに、退院後早期で再転倒予防効果が認められたと考えられる。ただし、研究は単一施設内で実施したものであるため、今後は、多施設において介入試験を進めていくことが重要であると考えられる。また今回の退院時の介入のみでは、長期的な転倒予防効果は認められなかったことから、退院後においても介入を加えることを検討していく必要がある。再検討した上で、今後、全国規模での多施設共同介入研究を行う予定としている。

同大上田哲也助教は、次のように述べている。「病院での在院日数短縮が加速化している昨今の医療情勢において、十分に動作レベルが回復していない、いわゆる「転倒予備軍」の増加が見込まれており、退院患者に対して再転倒予防のための適切な指導を行うことが喫緊の課題になっている。その中で、本研究では、退院時に、患者に描いてもらった自宅見取り図を用いて再転倒予防介入を行った結果、退院後早期では有用である可能性が示唆された。急性期病院の退院指導として在宅支援の拡張的役割を果たす意味において、本研究は一定の見解が得られたものであると考える」。

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