骨強度が低い患者への脊椎固定術、スクリューの緩みや骨癒合率低下が課題
ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社は10月20日、脊椎固定術で用いられるスクリューの違いと再手術率との関係についてメタ解析を行った結果、骨粗しょう症患者への「セメント注入型椎弓根スクリュー(FPS: fenestrated pedicle screws)」の使用により、再手術率の低下がみられ、外科的固定性に加えて臨床的にも有効であることが示唆されたと発表した。この研究は、同社整形外科領域部門のデピューシンセス事業本部と、慶應義塾大学医学部整形外科学教室の共同研究によるもの。研究成果は、「Expert Review of Medical Devices」に掲載されている。
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日本では、人口の急速な高齢化により骨粗しょう症の患者数が増加しており、約1300万人いると言われている。骨粗しょう症によって骨折が生じやすくなり、要介護状態や寝たきりの原因となってしまうこともあることから、対策が社会的に重要な課題となっている。
骨粗しょう症を原因とする椎体骨折や脊柱の変形に伴う麻痺や疼痛に対する手術療法としては、脊椎固定術が選択肢となる。脊椎固定術を受ける患者数は年齢の上昇とともに増加傾向にあり、骨粗しょう患者の有病率と関連がみられる。骨粗しょう症などを原因とする症状に対して脊椎固定術が必要である一方、脊椎固定術を行う際には「骨粗しょう症による脊椎の脆弱性」を考慮する必要がある。
骨粗しょう症などで骨強度が低下した患者に脊椎固定術を行うと、スクリューの緩みや抜けが起こりやすく、インプラント全体を保持できなくなる場合があるほか、骨癒合率の低下や、腰背部痛やロッドの突出による再手術が必要となる場合もあり、これらは脊椎固定術の課題であると考えられる。実際に、骨粗しょう症患者対する脊椎固定術について報告した21報の文献に基づくメタ解析では、解析対象症例の22.5%にスクリューの緩みが生じ(95%CI 10.8-33.6%)、骨癒合率は88.4%(95%CI 82.3-93.5%)と報告されている。
FPSはCPSに比べスクリューが緩むリスクが低く、骨粗しょう症患者では再処置率減少
研究グループは今回、胸腰椎の脊椎固定術を受けた患者を対象に「従来型椎弓根スクリュー(CPS: conventional pedicle screws)」と「セメント注入型椎弓根スクリュー(FPS)」の臨床効果を比較することを目的に、患者を骨粗しょう症の有無で細分化して評価した。
スクリューの緩み、再処置率(再手術のうち、椎弓根スクリューの抜去もしくは追加の埋植を伴う再手術の割合)、再手術率(再手術のうち、椎弓根スクリューの抜去もしくは追加の埋植を伴わない再手術の割合)を主要評価項目として検証した結果、FPSはCPSに比べ、スクリューの緩みのリスクが低く、骨粗しょう症患者においては再処置率が減少することが示唆された。
FPSが、特に骨粗しょう症患者のスクリュー固定に効果的である可能性
今回の研究により、FPSの使用は特に骨粗しょう症を有する患者で、脊椎固定術におけるスクリューによる固定を達成するための効果的な方法であることが示唆された。
同社は「今後も外科手術製品やソリューションの提供のみならず、さまざまな研究成果やエビデンスに基づく治療の発展と社会問題解決への貢献を目指していく」と、述べている。
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