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ジェンダーに対する思い込みが子どもに生じる時期を明らかに-京大ほか

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2022年10月20日 AM11:18

懸念されるジェンダーギャップ問題、なぜ子どもがステレオタイプを持つようになるのか

京都大学は10月12日、日本の4歳から7歳の子どもを対象に、「男性=賢い」「=優しい」というジェンダーステレオタイプがいつごろから見られるようになるかを検証し、「=優しい」というステレオタイプは4歳頃から一貫して見られることが示されたと発表した。この研究は、同大大学院文学研究科の森口佑介准教授、山本寛樹研究員(兼:、研究当時)、追手門学院大学心理学部の大神田麻子准教授、大阪大学大学院人間科学研究科の鹿子木康弘准教授、孟憲巍助教、椙山女学園大学人間関係学部の浦上萌准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

過去数十年にわたって、世界中の国が男女共同参画の推進に取り組んできたが、政治、教育、学術、経済などの分野で女性の社会進出が遅れているジェンダーギャップの存在は、21世紀の最大の問題の一つである。科学界においても、特定の専門分野で働く女性が男性よりも少なく、科学、技術、工学、数学、医学分野では女性の著者が少ないという、典型的なジェンダーギャップが観察されている。

残念ながら、このようなジェンダーギャップが大きな国として、日本が挙げられる。政治家や企業トップの男性が女性を蔑視するような発言をしてメディアを賑わせることは日常茶飯事で、SNSなどでは、そのような発言を擁護するような投稿も散見される。実際、世界経済フォーラムが2022年に発表したジェンダーギャップ指数において、日本は146か国中116位であり、先進国の中で最低レベルである。このようなジェンダーギャップを生みだす要因はさまざまあるが、一つの要因として、「男性は頭がいい、女性は優しい」などのようなジェンダーステレオタイプが考えられる。ジェンダーステレオタイプを持つ子どもは、それらのイメージに沿うように普段の振る舞いや進路・職業選択を行い、その結果として、ジェンダーギャップが維持・拡大されるという悪循環が多くの研究で指摘されている。しかしながら、このようなジェンダーステレオタイプはいつごろから見られるのかは、いまだ明らかではなかった。

「男性=賢い」「女性=優しい」という意識、日本の4歳~7歳の子どもを対象に検証

米国の子どもを対象にした研究では、6歳頃から「男性=賢い」というステレオタイプが見られることが報告されている。しかしながら、このようなジェンダーステレオタイプが我が国でも見られるのか、また、そのような傾向がどのような要因に影響を受けるのかは明らかではない。そこで研究グループは、日本の4歳から7歳の子どもを対象に、「男性=賢い」「女性=優しい」というジェンダーステレオタイプがいつごろから見られるようになるかを検証した。また、そのようなジェンダーステレオタイプに、親が持つジェンダーに対する態度が影響するかも検証した。

話を聞いてイメージするテスト、女児は自分の性別と「賢さ」や「優しさ」を結びつける傾向

今回の研究では4歳から7歳の子どもとその保護者合計220ペアが参加した。参加児は「賢い人」もしくは「優しい人」の話を聞かされた。たとえば、以下は、賢い人の例である。

【この会社ではたくさんの人が働いています。その中に、特別な人が一人います。この人は本当に本当に賢いんです。この人は、物事のやり方をすぐにわかって、誰よりも早く、誰よりも正しく答えを出してくれます。この人は本当に、本当に賢いのです。】

この話を聞かせた後に、成人女性や成人男性の写真を用意し、この賢い人が誰であるかを尋ねた。同様のテストを「優しさ」についても実施した。分析においては、女児が「賢い人」や「優しい人」として、自分と同じ女性を選ぶか、男児が「賢い人」や「優しい人」として、自分と同じ男性を選ぶかを調べた。これによって、自分の性別と「賢さ」や「優しさ」を結びつけるようなステレオタイプをもっているかを検証できる。その結果、どの年齢においても、女児は、男児よりも、自分の性別と「賢さ」や「優しさ」を結びつける傾向にあった。この結果は、米国の研究結果とは異なるものだった。

棒人間マークのテストでも、女児は年齢に関わらず自分の性別と「優しさ」を結びつける

初めの実験では、用いた女性・男性の写真、特に外見的な特徴によって結果が影響を受けた可能性も考えられた。そのため、次の実験では、より「女性」「男性」という概念と「優しさ」や「賢さ」を結びつけるかを検討するため、写真ではなく、棒人間(トイレのマーク)を用いた。結果として、どのような年齢においても、女児は、男児よりも、自分の性別と「優しさ」を結びつけていた。

7歳から男児は、女児より自分の性別と「賢さ」を結びつける傾向、保護者の態度は無関係

一方、「賢さ」については、4、5、6歳児では差がなかったが、7歳児において、男児は、女児よりも、自分の性別と賢さを結びつけていた。つまり、「男性=賢い」というステレオタイプが7歳頃から見られたのである。保護者のジェンダーに対する態度は、どちらの実験でも、子どもの反応とは関係しなかった。さらに、別の4歳から7歳の子どもとその保護者合計345ペアを対象に同様の実験を行ったところ、「女性=優しい」というステレオタイプは4歳頃から示され、「男性=賢い」というステレオタイプは、「女性=優しい」というステレオタイプよりは明確ではないものの、7歳頃から見られる可能性が示された。

つまり、4歳頃から「女性=優しい」というステレオタイプを持つようになることが明らかになった。また、「賢さ」については、外見的な特徴をなくした棒人間を使った場合に、「男児=賢い」というステレオタイプが見られる可能性が示された。

女児は優しさを幼児期から、男児は賢さを小学校に入るころから自分に押し付ける可能性

研究の結果は、ジェンダーステレオタイプが幼児期において既に出現していることを示唆している。このことから、女児は「優しさ」という特性を幼児期から自分に押し付け、男児は「賢さ」という特性を小学校に入るころから自分に押し付けるようになる可能性がある。また、この結果は、6歳頃から「男性=賢い」というステレオタイプを持つようになる米国よりも、幾分遅いことになる。ジェンダーギャップが大きい日本において、米国よりもジェンダーステレオタイプが出現するのが遅いのがなぜなのかは検証する必要がある。「また、このようなジェンダーステレオタイプは、子どもの将来に影響を与える可能性は否定できない。このようなステレオタイプが進路選択や職業選択に関連するのか、するとしたら、そのような影響を低減する方策について、今後検討していく必要がある」と、研究グループは述べている。

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