医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 未就学時のアレルギー症状から思春期のPFAS発症を予測できる可能性-成育医療センター

未就学時のアレルギー症状から思春期のPFAS発症を予測できる可能性-成育医療センター

読了時間:約 1分54秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2022年10月19日 AM09:16

成育コホートを分析しPFASとアレルギーマーチのアレルギー症状との関連を調査

国立成育医療研究センターは10月17日、同施設で2003年から一般の小児を対象として行ってきた出生コホート研究(成育コホート)において、13歳までのデータを使って花粉-食物アレルギー症候群(Pollen-food allergy syndrome:PFAS)は、アレルギーマーチの一つであり、5歳時のアレルギー症状やアレルギー検査結果で13歳のPFASを予測できる可能性を報告したと発表した。この研究は、同アレルギーセンターの大矢幸弘センター長、安戸裕貴医師、山本貴和子医師らの研究グループによるもの。研究成果は、「Nutrients」に掲載されている。

PFASは、花粉感作後に、花粉と交差抗原性を有する植物性食物を経口摂取してアレルギー症状を来す病態を指す。口腔咽頭症状に限局することが多く、口腔咽頭症状を主徴とすることから、口腔アレルギー症候群(oral allergy syndrome:OAS)とも呼ばれる。

研究グループは今回、同センターで出産予定の妊婦(1,701人)と、生まれた子ども(1,550人)を対象に行っている成育コホート(出生コホート)のデータを使用・分析し、PFASとアレルギーマーチのアレルギー症状との関連を調べた。

成育コホートは、2003~2005年に妊娠した母親を登録し、現在も母親と誕生した子どもを妊娠中から継続的に追跡してアンケート調査、診察、血液検査により、喘息などのアレルギー性疾患や症状、IgE抗体価などを調査しているもの。同センターで出産した一般集団の子どもを追跡し健康状態の推移を調査した「前向きコホート研究」であることから、後ろ向きコホート研究や横断研究に比べ、エビデンス・レベルの高い疫学調査だとしている。

5歳時のアトピー性皮膚炎・シラカバ・・ネコ感作が、13歳時のPFASと関連

調査の結果、PFASがアレルギーマーチのアレルギー症状と関連していることが明らかになった。

具体的には、5歳時アトピー性皮膚炎(加えて喘鳴、鼻炎などの併存)は、13歳時のPFASとの関連が統計学的に有意になること、5歳時Bet v1(シラカバ)・Cri j1(スギ)・ネコ感作は、13歳時のPFASとの関連が統計学的に有意になることが明らかになった。

未就学児のシラカバ・スギ・ネコ感作、将来のPFAS発症リスク予測につながる可能性

同センターは2021年に約10%の13歳時がPFASをもっていることを明らかにしているが今回の研究により、未就学時のアレルギー症状と思春期のPFASが関連していることが明らかになった。これらのことから、昨今増加しているPFASは、アレルギーマーチの一つのアレルギー疾患と考えていく必要のあることが判明した。

「未就学児でシラカバ・スギ・ネコに感作がある場合は、将来のPFAS発症リスクを予測できる可能性がある。すでにこれらに感作を認めている子どもについては、将来のPFASの発症を注視していく必要がある」と、研究グループは述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 血液中アンフィレグリンが心房細動の機能的バイオマーカーとなる可能性-神戸大ほか
  • 腎臓の過剰ろ過、加齢を考慮して判断する新たな数式を定義-大阪公立大
  • 超希少難治性疾患のHGPS、核膜修復の遅延をロナファルニブが改善-科学大ほか
  • 運動後の起立性低血圧、水分摂取で軽減の可能性-杏林大
  • ALS、オリゴデンドロサイト異常がマウスの運動障害を惹起-名大