より広くアレルギー症状を制御できる治療薬開発が急務
浜松医科大学は10月13日、CD109分子が樹状細胞を介して気管支喘息を悪化させていること、抗CD109抗体により気管支喘息の病態が改善することを明らかにしたと発表した。この研究は、同大内科学第二講座大学院生の青野祐也医員、鈴木勇三助教、須田隆文教授ら、名古屋大学、藤田医科大学の研究グループによるもの。研究成果は、「American Journal of Respiratory Cell and Molecular Biology」に掲載されている。
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気管支喘息の有病率は約10%であり、年々増加傾向にある。中でも、高用量の吸入ステロイドや生物学的製剤などの治療を行ってもコントロール困難な重症喘息患者が存在する。頻回の発作による症状増悪に加えて、重症喘息患者の医療費負担は大きく、その克服は重要な課題だ。これまでのIL-5、IL-4R、IgE等を標的とした抗体製剤は、一つのアレルギーに関連する分子のみを標的としていた。しかし、より広くアレルギー症状を制御できるような、新しい治療薬の開発が急務だ。特に、気管支喘息の病態に広く関わる樹状細胞(DCs)や2型自然リンパ球(ILC2s)を直接的に制御できる治療薬の開発が望まれている。
喘息モデルマウスの樹状細胞に誘導されるCD109、中和抗体で病態が著明に軽減
今回、研究グループは、代表的なアレルゲンであるダニ抗原(HDM)を経鼻投与することで気管支喘息の病態を再現。すると、CD109分子が欠損しているマウスでは、アレルギー炎症が著明に減弱していた。また、CD109分子は喘息病態において樹状細胞に誘導され、樹状細胞依存性にアレルギー炎症を引き起こしていることも判明した。
そこで、研究グループは抗CD109抗体を作製。抗CD109抗体を気管支喘息モデルマウスに投与した結果、アレルギー炎症が著明に軽減された。
CD109分子、新たな気管支喘息治療開発につながる可能性
今回の研究結果から、CD109分子が樹状細胞依存性に気管支喘息の病態を悪化させていることが示された。重要なことに、抗CD109分子にはアレルギー炎症の減弱効果が確認された。この結果からCD109分子が新たな気管支喘息の治療薬の開発につながると考えられる、と研究グループは述べている。
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