母親の背景因子と、母乳中の免疫因子の関連を調査
国立成育医療研究センターは10月13日、出産時の母親の背景因子「分娩方法」「出産経験」が、初乳中の成分(TGF-β1, TGF-β2, IgA)と関連があることを明らかにしたと発表した。この研究は、同センター皮膚科の吉田和恵診療部長、福田理紗医師らの研究グループと、周産期・母性診療センター三井真理診療部長ら、ピジョン株式会社との共同研究によるもの。研究成果は、「Nutrients」オンライン版に掲載されている。
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母乳中の「TGF-β」は、乳幼児のアトピー性皮膚炎の発症を防ぎ、血清中の「IgA」を促進する可能性が示唆されており、重要な免疫因子として着目されている。また、母乳中のIgAも重要な免疫因子の一つで、乳幼児の腸の免疫成熟に重要な役割を果たすことがわかっている。
一方、母親の背景因子と母乳中成分(特に脂質などの栄養素)の関係についてはこれまでに多くの研究報告があるが、母乳中の免疫成分との関連は明らかにされていなかった。そこで研究グループは今回、母親の背景因子と母乳中の免疫因子(TGF-β1, TGF-β2, IgA)の関連を調べた。
母乳中の免疫成分濃度の個人差は約1か月で収束、初乳を与える重要性を示す結果に
研究では、国立成育医療研究センターで出産した26~46歳までの母親42人を対象とし、出産後2~6日に初乳と約1か月後の25~37日に成熟乳の提供、さらに、母親の背景情報として質問紙への回答も依頼した。
解析の結果、初乳中の免疫成分の濃度は大きな個人差があったが、約1か月後には収束していくことがわかった。
また、帝王切開で出産した母親の初乳中の一部の免疫因子(TGF-β1, TGF-β2, IgA)の濃度が経腟分娩の場合よりも高く、初乳を与える重要性が改めて確認された。
出産経験では、第1子を出産した初産婦の方が第2子以降を出産した経産婦に比べて濃度が高いことも明らかになった。
初乳を与える機会を逃さないために、出産前から母親が理解できる情報提供を
今回の研究により、初乳を与える重要性が改めて確認された。帝王切開後の授乳は経腟分娩時に比べると負担も大きいため、授乳開始が遅くなるとも言われている。そのため、手術後の痛みがひどく起き上がれず直接授乳が難しい場合は、さく乳器を使うなど、母親の状態に合わせ、子どもに初乳を届ける工夫が必要だ。
「分娩後の初乳をあげる機会を逃さないよう、出産前から母親自身(特に初産婦)が理解できるような情報提供の仕方を検討していくことが望まれる」と、研究グループは述べている。
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・国立成育医療研究センター プレスリリース