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広範囲脳虚血の脳主幹動脈閉塞症、血管内治療が有効な虚血範囲を明らかに-兵庫医大

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2022年10月13日 AM10:39

血管内治療の有効性・安全性を、脳虚血広範囲群と限定範囲群とで比較分析

兵庫医科大学は10月11日、広範囲脳虚血病変を伴う脳主幹動脈閉塞症患者において、「血管内治療が有効である脳虚血範囲の限界」を世界で初めて報告したと発表した。この研究は、同大脳神経外科学の吉村紳一主任教授、臨床疫学の森本剛教授、内田和孝准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「JAMA Neurology」に掲載されている。

2015年に脳主幹動脈閉塞による急性期脳梗塞患者に対する血管内治療の有効性が証明された。しかし、「血管内治療が有効である」としてガイドラインで推奨される患者は全体の約10%であり、1人でも多くの患者が血管内治療の恩恵を受けるためには、「臨床試験で検証されていないために、ガイドラインの推奨対象となっていない患者における血管内治療の有効性や安全性の評価」が求められていた。特に、広範囲脳虚血病変を伴う患者については、これまで「機能的転帰の改善が望めない可能性」と「治療後の出血性合併症が多く発生する可能性」が危惧されることから、現時点のガイドラインでは推奨されていない。

そこで、研究グループは、広範囲脳虚血病変(ASPECTS≦5)を伴った脳主幹動脈閉塞症例に対して、血管内治療が有効であることを世界に先駆けてランダム化臨床試験で証明した。今回の研究は、広範囲脳虚血病変を伴う脳主幹動脈閉塞症に対するランダム化臨床試験(RESCUE-Japan LIMIT)の追加解析。ランダム化臨床試験の登録患者202例を「相対的に脳虚血範囲が大きい脳虚血病変を有する群(ASPECTS≦3)106例」と「相対的に脳虚血範囲が限られている群(ASPECTS 4-5)96例」の2群に分けて、血管内治療の有効性と安全性を分析した。

「ASPECTS≦3」群、血管内治療は90日後の機能的転帰を有意に改善せず

研究の結果、相対的に脳虚血範囲が大きい脳虚血病変を有する群(ASPECTS≦3)において、血管内治療は90日後の機能的転帰を有意に改善せず、症候性頭蓋内出血の発生率が高いことが示された。「ASPECTSが3である患者」を血管内治療の適応基準とするか否かは、さらなる検討が必要であると考えられる。

一方、脳虚血範囲が限られている群(ASPECTS 4-5)については、「ガイドラインで推奨されている対象患者(ASPECTS≧6)と同等の有効性と安全性」が確認された。

さらなる追加解析を実施予定

同研究に登録された患者の約8割は「MRIを用いて脳虚血範囲の評価」が行われていたが、諸外国ではCTによる脳虚血範囲の評価が一般的であり、「MRIによるASPECTSの評価」と「CTによるASPECTSの評価」が異なる可能性がある。また、出血性合併症に対する懸念から「rt-PA静脈投与が行われた患者の割合が20%程度」と「諸外国と比較して患者の割合」が少ないことがわかっている。これらの血管内治療以外の診療の違いが「広範囲脳虚血病変を伴う脳主幹動脈閉塞症に対する血管内治療の有効性や安全性」に与える影響を評価するために、さらなる追加解析を実施する予定だ、と研究グループは述べている。

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