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経腸栄養剤使用SMID児で腸内細菌叢の多様性低下、食物繊維不足の可能性-関西医科大

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2022年10月12日 AM10:57

重症心身障がい児の腸内細菌叢を調査した研究はなかった

関西医科大学は10月7日、経腸栄養剤を使用している重症心身障がい児と同年代の健康な小児の腸内細菌叢を比較し、前者では腸内細菌叢の多様性が低下していること、腸内細菌叢の構成が大きく異なること、腸内細菌叢に占める酪酸産生菌の割合が有意に低下していることを発見したと発表した。この研究は、同大医学部小児科学講座の中井陽子助教、同・赤川翔平講師、同・金子一成教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Parenteral and Enteral Nutrition」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

ヒトの腸内では1,000種類以上、40兆個以上の細菌が腸内細菌叢を形成しており、宿主であるヒトの健康と深く関係している。最近では、腸内細菌叢の乱れが腸の疾患やアレルギー疾患など、さまざまな疾患の発症に関連していることがわかってきた。

重症心身障がい児では、長期的な経腸栄養剤や薬剤の使用により腸内細菌叢が大きく乱れていることが予想されるが、実際に腸内細菌叢を調査した研究はこれまで存在しなかった。

そこで研究グループは今回、経腸栄養剤を使用する重症心身障がい児(severe motor and intellectual disabilities:)10人(SMID群:男児5人、年齢中央値10.0歳[四分位範囲9.0-13.2])と健康な小児(healthy control)19人(HC群:男児9人、年齢中央値9.0歳[四分位範囲7.5-10.0])の便について遺伝子解析を実施し、腸内細菌叢の多様性、菌構成、酪酸産生菌の割合を比較した。

経腸栄養剤使用のSMID児は腸内細菌叢の多様性低下、Clostridiales減少/Bacteroidales増加

研究の結果、2群間で年齢・性別に有意な差はなかった。腸内細菌叢の多様性を示すShannon指数、Simpson指数はいずれもSMID群で低いことが判明した。腸内細菌叢の菌目構成はSMID群においてClostridiales目の割合が低く(中央値13.5%[四分位範囲12.1-21.3%]vs.43.6%[36.3-52.1],p<0.001)、Bacteroidales目の割合が高いこともわかった(39.7%[33.7-53.1]vs.19.3%[8.2-29.6], p=0.009)。また、酪酸産生菌がSMID群において有意に低いことが明らかになった(1.4%[1.2-1.6]vs.6.2%[4.2-9.2],p<0.001)。

SMID児の食物繊維摂取量、推奨量の3分の2

SMID児が摂取している栄養剤や食事の栄養素を詳しく調べたところ、食物繊維の摂取量が厚生労働省の推奨する量の3分の2に留まっており、食物繊維の不足が腸内細菌叢の乱れの一因と考えられた。これは日本で使用されている経腸栄養剤の多くが食物繊維を含まないためと考えられるという。

プロバイオティクスなどでSMID児の腸内細菌叢を改善していくことが重要

今回の研究成果により、経腸栄養剤を使用しているSMID児の腸内細菌叢が乱れていることが世界で初めて明らかになった。SMID児では健康な小児と比較して排便に関するトラブルが多く、また、アレルギー疾患が多いと報告されているが、腸内細菌叢の乱れがこれらの一因になっている可能性がある。

「今後、整腸剤などのプロバイオティクスや食物繊維などのプレバイオティクスを用いてSMID児の腸内細菌叢を良い状態に改善させることが、SMID児の長期的な健康やQOLの改善につながるものと期待される」と、研究グループは述べている。

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