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コロナ禍に心停止現場に居合わせた市民のAED使用率ゼロ、人工呼吸も減少-阪大ほか

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2022年10月11日 AM10:27

17歳以下の小児院外心停止患者2万3,000人を対象に、1か月生存率の年次推移を検討

大阪大学は10月7日、緊急事態宣言中に17歳以下の小児の心停止現場に居合わせた一般市民によるAEDの使用率がゼロになったことを示し、コロナ禍における胸骨圧迫のみの心肺蘇生が増えた一方で、人工呼吸付きの心肺蘇生が減ったことを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科環境医学のZHA LING特任助教(常勤)と北村哲久准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「JAMA Network Open」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

これまで海外では、「コロナ禍と成人の院外心停止転帰の悪化」との関連がいくつかの研究で示されていたが、17歳以下の小児の院外心停止患者の転帰に関する研究は限られていた。

そこで研究グループは今回、2005~2020年の総務省消防庁の「全国院外心停止患者登録データ」を用いて、17歳以下の小児院外心停止患者2万3,000人を対象に、1か月生存率の年次推移を検討した。

1か月生存率は2005~2020年まで年々向上、コロナ禍前後で有意差なし

その結果、1か月生存率が2005年の7.7%から2020年の12.3%まで、年々向上していることが示唆された。また、コロナ禍前後で見ても、2015~2019年は13.2%(852/6,443)、2020年は12.3%(143/1,160)、調整オッズ比は0.95(95%信頼区間0.77-1.17)で、有意差はなかった。

コロナ禍では、胸骨圧迫のみの心肺蘇生が増加し人工呼吸付きの心肺蘇生が減少

また、コロナ禍が小児院外心停止患者の生存率への影響を検討するため、2015〜2020年の小児心停止患者7,603人(男児4,567人[60.1%]、平均年齢6.2歳)を対象に、コロナ禍前(2015〜2019年、6,443人)とコロナ禍後(2020年、1,160人)の特徴を比較し、ロジスティクス回帰の方法により、コロナ禍前後における小児患者の生存率の変化を検討した。

胸骨圧迫のみの心肺蘇生がコロナ禍前の47.6%(3,064/6,443)からコロナ禍後の52.9%(614/1,160)に増加したが、人工呼吸付きの心肺蘇生がコロナ禍前の14.2%(914/6,443)からコロナ禍後の10.9%(126/1,160)に減少。また、通報から救急隊接触時までの時間の中央値がコロナ禍前の8分からコロナ禍後の9分に延長した。

緊急事態宣言期間中に心停止現場に居合わせた一般市民によるAEDの使用率はゼロ

さらに、2020年の緊急事態宣言期間中とそれ以外の期間における小児心停止患者の特徴と生存率も比較した。心停止現場に居合わせた一般市民によるAEDの使用率は、非緊急事態宣言時に3.2%(33/1,027)だったが、緊急事態宣言中ではゼロだった。1か月生存率は、非緊急事態宣言時は12.4%(127/1,027)、緊急事態宣言中は12.0%(16/133)、粗オッズ比は0.97(95%信頼区間0.56-1.69)で、有意差はなかった。

一般市民がAEDを積極的に使うことを啓発する取り組みが必要

今回の研究では、コロナ禍における成人の院外心停止患者の生存率が低下したのとは対照的に、コロナ禍における小児の院外心停止患者の1か月生存率に変化はなかった。通報から救急隊接触時までの時間が長くなり、人工呼吸付きの心肺蘇生の実施率が低下したにもかかわらず、生存率が悪化しなかったのは、2020年に胸骨圧迫のみの心肺蘇生が増加することによって相殺された可能性があるという。

また、緊急事態宣言中に高い生存率に関連する重要な予後因子である、心停止現場に居合わせた一般市民によるAEDの使用率は減少していた。小児院外心停止患者の生存率を改善するためには、コロナ禍において行動制限があっても、一般市民がAEDを積極的に使うことを啓発する取り組みが必要だとしている。

「本研究成果により、2020年はコロナ禍という状況が小児の院外心停止患者の生存率の変化と有意な関連性がないことが示唆されたが、一般市民によるAEDの使用等の行動変容があったため、コロナ禍においても、積極的にAEDを使用したり、心肺蘇生をしたりすることを一般市民に啓発普及することが小児院外心停止患者の生存率を改善するために必要だ」と、研究グループは述べている。

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