医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 集中治療要する新型コロナ、9日以内のレムデシビル投与で死亡リスク減-東京医歯大ほか

集中治療要する新型コロナ、9日以内のレムデシビル投与で死亡リスク減-東京医歯大ほか

読了時間:約 3分23秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2022年10月07日 AM11:03

集中治療を要した日本人新型コロナ患者に対するレムデシビルの効果を検証

東京医科歯科大学は10月5日、発症から9日以内のレムデシビル投与は非投与と比較して、集中治療を要する新型コロナウイルス感染症患者の死亡リスクを減少させることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科国際健康推進医学分野の藤原武男教授の研究グループと、同大救急救命センター、集中治療部、臨床検査医学分野、画像診断・核医学分野との共同研究によるもの。研究成果は、「Journal of Medical Virology」にオンライン公開されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

新型コロナウイルス感染症患者に対するレムデシビルの有効性はいくつかの大規模臨床試験で検証され、回復までの期間を短縮する効果が報告されているが、死亡リスクを抑制する効果は証明されていなかった。しかし、いくつかの研究結果から、発症から早期に投与されたレムデシビルは死亡リスクを抑えることが示唆されていた。また、これまでのレムデシビルの効果を検証する臨床試験では人工呼吸器が装着された人を主要な対象としておらず、人工呼吸器や体外式膜型人工肺(/エクモ)を必要とする比較的少数の人たちに絞った解析では、レムデシビルの回復期間短縮効果がみられないことが判明していた。

日本全国の集中治療室の情報共有システム「CRISIS(クライシス)」によると、日本では人工呼吸器やECMOを必要とする重症新型コロナウイルス感染症患者の生存率は他国に比べて良好だった。また、第1~5波での死亡率の変動が少ないことから研究グループは、「重症患者への医療の質は流行時期によらず比較的保たれており、このような背景のある日本でこそ、集中治療を要した新型コロナウイルス感染症患者に対して実際に行われた診療や治療を振り返って、レムデシビルの効果が検証されるべきだ」と考え検証を行った。

168例を検証、発症から9日以内の投与で院内死亡が起こりにくくなると判明

研究グループは、2020年4月~2021年11月の間(第1~5波)に東京医科歯科大学病院の集中治療室で治療を受け、副腎皮質ステロイド投与を受けた新型コロナウイルス感染症患者168例を解析。レムデシビルは投与されるタイミングも重要であることが過去の研究で示唆されていたため、レムデシビルを投与された人は、発症から9日以内に投与された人と10日目以降に投与された人に分け、投与されなかった人たちとの死亡リスクを比較検証した。この際、併存疾患、血液検査の結果、酸素需要量だけではなく、胸部CT画像で測定した肺炎の重症度も考慮した解析を行った。

対象者全体のうち、131例(78%)が、観察開始日(入院日または発症日どちらか遅い日)に、高流量酸素または人工呼吸器による治療を受けていた。全期間における院内死亡率は32/168例(19.0%)で、第1~5波までで大きな違いはなかった。レムデシビルを投与していない人たちの死亡率は45.7%だったのに対し、レムデシビルを発症から9日以内に投与された人たちの死亡率は10.4%で、発症から10日目以降で投与された人たちでは16.2%だった。研究グループはカプラン・マイヤー生存曲線で、時間の経過とともに死亡していない人(=生存している人)の割合が、それぞれのグループでどのように、どのくらい減っていくのかを確認した。

観察中に死亡が発生すると、生存曲線は下がって(=生存している人の割合が減少)いく。発症から9日以内にレムデシビルを投与された人たちの生存曲線は、全観察期間を通してレムデシビルを投与されなかった人たちの生存曲線よりも高い位置にあり、9日以内にレムデシビルを投与された人たちは、投与されなかった人たちよりも院内死亡が起こりにくかったことがわかった。

非投与に比べ院内死亡90%抑制、10日目以降は効果見られず

さらに、併存疾患の数、入院日、腎機能障害、肝機能障害、酸素需要量、胸部CTの肺障害の程度について考慮した生存分析を行った結果、発症から9日以内にレムデシビルを投与された人たちとレムデシビルを投与されなかった人たちのハザード比は0.10(95%信頼区間0.025~0.428)だった。これは、観察期間中にレムデシビルを投与されなかった人たちの「院内死亡に関するハザード」を1とした時、発症から9日以内にレムデシビルを投与された人たちのハザードが0.10となること、つまり、「発症から9日以内のレムデシビル投与により、非投与と比較して院内死亡が90%抑制される」ことを意味する。

一方、発症から10日目以降でレムデシビルを投与された人たちでは、統計的に意味のある院内死亡の抑制効果は見られなかった(ハザード比0.42、95%信頼区間0.12-1.52)としている。

アジア人種および重症患者について、実臨床でのレムデシビルの効果を示す結果に

今回の研究成果により、発症から9日以内のレムデシビル投与は非投与と比較して、集中治療を要する新型コロナウイルス感染症患者の死亡リスクを減少させることが明らかになった。

「過去の臨床研究ではアジア人以外の人種が多く含まれていたが、今回は日本人および4.8%の他地域のアジア人が対象であり、また、過去の臨床研究では主要なターゲットではなかった人工呼吸器やECMOを必要とする人たちが対象であったことから、アジア人種および重症患者について、実臨床でのレムデシビルの効果を示すことができた点において、特に意義がある」と、研究グループは述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 視覚障害のある受験者、試験方法の合理的配慮に課題-筑波大
  • 特定保健指導を受けた勤労者の「運動習慣獲得」に影響する要因をAIで解明-筑波大ほか
  • 腎疾患を少ないデータから高精度に分類できるAIを開発-阪大ほか
  • ジャンプ力をスマホで高精度に計測できる手法を開発-慶大ほか
  • I型アレルギーを即座に抑制、アナフィラキシーに効果期待できる抗体医薬発見-順大ほか