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透析アミロイドーシス、血清アルブミン減が発症リスクを高める可能性-阪大ほか

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2022年10月06日 AM10:21

透析患者血清とアミロイド誘導装置HANABI-2000を用いてリスク因子を探索

大阪大学は10月3日、人工透析医療の合併症である透析アミロイドーシスの発症機構をタンパク質科学の手法で研究し、血中の血清アルブミンの量が減少することで、β2-ミクログロブリンのアミロイド線維が形成されやすくなることを解明したと発表した。この研究は、同大国際医工情報センターの後藤祐児特任教授(現:大学院工学研究科、特任研究員)、中島吉太郎特任研究員(現:大学院工学研究科、特任助教)、新潟大学医歯学総合病院の山本卓准教授ら、、福井大学の研究グループによるもの。研究成果は、「Nature Communications」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

人工透析医療は、腎不全患者の生命維持のために重要な医療だ。人工透析を始めると終生続ける必要があるため、10年以上の期間にわたり人工透析を受けている患者も珍しくない。透析期間が15年を越える患者の約10人に1人が透析アミロイドーシスと呼ばれる合併症を発症し、手首や関節の強い痛みや運動障害などの症状が現れる。この病気の原因は、β2-ミクログロブリンのアミロイド線維だ。透析をはじめると血中のβ2-ミクログロブリン濃度が高まり、透析期間が長期化することでも発症リスクが高まる。事前に発症リスクを察知し、病気を予防することが望まれるが、現在の医学では発症予測は困難であり、β2-ミクログロブリン濃度上昇、透析期間の長期化に加え、未知のリスク因子の存在が予想されている。

今回、研究グループは、透析アミロイドーシスの新たなリスク因子を探索するために、透析患者血清と独自に開発した超音波を利用したアミロイド誘導装置HANABI-2000を用いて研究を行った。

血清アルブミンがアミロイド形成を妨げていると判明

健常者血清と透析患者血清の違いを分析したところ、透析患者の体内は健常者と比較してアミロイドが形成されやすい危険な環境であることが判明。次に、透析患者血清を一回の透析治療前後で採取し、その違いを分析した。実験から、透析治療の直後はリスクが低下した状態であることがわかった。研究の結果から、透析患者の血清環境はアミロイド形成リスクが高まっているが、こまめに透析治療を受けることでそのリスクを低減できることがわかった。

さらに、血中の血清アルブミンがアミロイド形成を妨げていることが明らかになった。血清アルブミンは「マクロモレキュラークラウディング(高分子混み合い)」効果によって血中のタンパク質の恒常性(プロテオスタシス)の維持に関わっていると考えられる。血清アルブミンの量が減ることが、血液中でのアミロイド線維形成を容易にし、透析アミロイドーシスに至る可能性が示唆される。血清アルブミンは栄養状態を示す指標でもあるため、栄養維持により透析アミロイドーシスを予防できる可能性があるとしている。

アルツハイマー病やパーキンソン病などの予防・治療進展にもつながる可能性

本研究成果により、血中の血清アルブミンが減少することが、β2-ミクログロブリンのアミロイド線維形成を容易にし、透析アミロイドーシスの発症リスクを高めることが新たにわかった。この知見をもとに、人工透析医療による合併症の根絶に貢献することが期待される。また、透析アミロイドーシスのみならず、アルツハイマー病やパーキンソン病などの他のアミロイドーシスも含めた予防や治療の進展にもつながる可能性を秘めている、と研究グループは述べている。

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