SSc-ILD患者58人、膠原病内科医121人を対象に
日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社は10月4日、全身性強皮症に伴う間質性肺疾患(SSc-ILD)診療における医師・患者の疾患理解およびコミュニケーションに対する意識調査を実施し、その結果を発表した。調査結果は「THERAPEUTIC RESEARCH」誌に掲載されている。
画像はリリースより
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全身性強皮症(Systemic sclerosis:SSc)は、免疫異常、線維化、血管障害を基本病態とした疾患で、厚生労働省が定める難病に指定されている。皮膚が硬くなる変化を代表的な症状とする疾患であるが、皮膚以外の消化管、肺、心臓、腎臓など全身の臓器にも症状が現れる。間質性肺疾患(Interstitial lung disease:ILD)は、SScの主な死亡原因であり、患者の生命予後に大きく影響する。そのため、SSc-ILDはアンメットメディカルニーズが高い疾患として、治療薬の開発が望まれていた。
今回の調査は、日本のSSc-ILD診療において医師・患者の疾患理解およびコミュニケーションにおける認識の一致・不一致を確認し、コミュニケーションの現状と課題を明らかにすることを目的に実施された。調査期間は、医師が2021年9月3日~10日、患者が2021年9月10日~11月19日。調査方法は、医師がインターネット調査、患者が医師からの手渡しによる郵送留置き調査だった。対象はSSc-ILD患者58人、膠原病内科医121人だった。
患者の約8割が「診断時に不安」、医師・患者では「医師の説明」に対する認識に違い
調査の結果、診断時に患者の約8割が不安を感じており、治療開始時に不安を感じていた患者は約半数であることがわかった。
また、「診断時」の医師からの説明として、アンケート調査の設問項目に設定した15項目のうち、半数以上の患者が覚えていたのは「病態」「長期間の治療」の2項目だった。一方、医師の半数以上は、13項目を「説明している」と回答していた。
「治療開始時」の医師からの説明として、アンケート調査の設問項目に設定した10項目のうち、半数以上の患者が覚えていたのは「薬剤の有効性」だった。一方、医師の半数以上は、9項目を「説明している」と回答していた。
「インフォームドコンセントと意思決定の共有」の重要性が明らかに
診断時・治療開始時の説明における医師・患者間の認識に違いがみられたことより、医師が説明している情報が患者に正確に伝わっておらず、医師と患者の間で課題が共有できていない可能性が示され、医師-患者間のコミュニケーション・ギャップを解消するための取り組みの必要性が明らかとなった。
同調査を監修した日本医科大学大学院医学研究科アレルギー膠原病内科学分野の桑名正隆大学院教授は、次のように述べている。「患者さんは治療開始時と比較して、診断時に不安が大きいことが明らかになった。診断時に説明を受けたことの中で、患者さんが覚えている項目が少ない結果を踏まえ、重要な情報から、段階を追って伝えていくなど、医師側がコミュニケーションを工夫し、患者さんの理解を促す取り組みが求められている。患者さんが適切な治療を受けるために、インフォームドコンセントと意思決定の共有(Shared decision making)の重要性が改めて確認された」。
同社は、膠原病に伴う肺疾患に対する課題と、その解消のための各種啓発活動を行っている。9月の肺線維症月間を起点に、膠原病の合併症である間質性肺疾患や肺線維症を啓発する活動を行うほか、患者の意見を取り入れたインフォームドコンセントの実現をテーマとした医師向けのセミナーを実施している。
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・日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社 プレスリリース