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日本の消化器外科医による手術成績は男女で「同等」、NCD解析で-京大ほか

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2022年09月30日 AM10:54

女性の消化器外科領域への参画促進のため、男女で執刀数や術後合併症などを比較

京都大学は9月29日、日本消化器外科学会による日本最大の手術データベースNational Clinical Database(NCD)を利活用した研究において、男女の消化器外科医が執刀した手術の短期成績を解析し、男女は同等であることを示したと発表した。この研究は、同大医学研究科の大越香江客員研究員、藤田悠介医員、肥田侯矢講師、東京大学の野村幸世准教授、大阪医科薬科大学の河野恵美子助教、岐阜大学の吉田和弘教授(現:岐阜大学学長)、日本消化器外科学会の北川雄光理事長らの共同研究グループによるもの。研究成果は「The BMJ」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

日本の消化器外科医における女性の割合は6%程度と少なく(医師・歯科医師・薬剤師調査:2016年当時)、指導的立場の女性外科医はさらに少ないのが現状であり、女性が十分に活躍できているとはいえない状況である。それに比べて、カナダ、アメリカ、イギリスの一般外科医に占める女性の割合はそれぞれ、27.9%、22.0%、32.5%(カナダ医師会、アメリカ医科大学協会:いずれも2019年、イギリス国民保健サービス(NHS):2017年)であり、さらに、アメリカやカナダでの先行研究では、女性医師や外科医の治療成績は男性医師と同等かそれ以上であることが示されている。

このように、日本では女性外科医の割合が少なく、他国と比べて女性外科医が働くための環境が整っていないと考えられてきた。またこれまで、男女の消化器外科医による手術成績に差がないことを示したうえで、女性が外科医として十分活躍可能なことを明らかにする研究も行われていなかった。

研究グループは、これまでにNCDを使用して、女性消化器外科医一人当たりの手術執刀数が男性消化器外科医よりも少ないことを明らかにしている。今回の研究では、女性の消化器外科領域への参画を促進したいという考えのもと、日本最大の手術データベースであるNCDを活用し、男女の消化器外科医による執刀数や術後合併症などを比較することを計画した。

男女の消化器外科医による手術関連死亡率、術後合併症との関連性を検討

2013年~2017年にかけて登録されたNCDおよび日本消化器外科学会の会員データを使用して、幽門側胃切除術(DG:18万4,238症例)、胃全摘術(TG:8万3,487症例)、直腸低位前方切除術(LAR:10万7,721症例)の手術症例の患者背景や病院の特徴、患者の術後短期成績を執刀した外科医の性別や医籍登録後の年数などを分析した。この3つの術式はNCDに患者背景や合併症の有無などが詳細に記録されており、かつ女性消化器外科医の執刀数が比較的多い術式だった。

解析対象は、手術死亡率、手術死亡率と術後合併症の組み合わせ、膵液漏(DG/TGのみ)、縫合不全(LARのみ)とした。患者、外科医、病院の特徴など、術後死亡率や合併症に影響するさまざまな要因で調整した多変量ロジスティック回帰モデルを用いて、男女の消化器外科医による手術の手術関連死亡率および術後合併症との関連性を検討した。

手術短期成績は同等、女性消化器外科医はよりリスクの高い患者を手術している傾向

その結果、女性消化器外科医は男性消化器外科医よりも医籍登録後(医師免許取得後に厚生労働省の帳簿に登録すること)の年数が短く、腹腔鏡手術に携わる割合が少ないものの、よりリスクの高い患者を手術していたことが明らかになった。病院の規模や患者の年齢や併存疾患などを調整して比較した手術死亡率の調整リスクには男女間で有意差はなかった。このことは、女性消化器外科医の手術短期成績が男性消化器外科医と同等であることを示すものである。

手術トレーニングの機会や執刀数、昇進機会などにおいて男女平等の実現に期待

既存の多くの先行研究では、メディケアなどの請求データベースを使用しているが、今回の研究では患者の術前状態や手術成績の精度が高い臨床データベースを用いているため、選択した個々の術式について患者関連因子で交絡因子を調整することが可能だった。研究の解釈において注意すべき点として、女性外科医の数が男性外科医の数よりかなり少ないため、ひとりの女性外科医のアウトカムが全体のアウトカムに大きな影響を与えるというバイアスが存在する可能性がある。しかし、全体として女性消化器外科医の手術成績は男性消化器外科医と同等であり、今後さらに手術経験を男性医師並みに増やすことで、女性消化器外科医のさらなる活躍が期待される。

また、大越客員研究員は「女性は手術を執刀するのに適していないと考えられ、外科医になりたいと思っても歓迎されないという話がよくあった。しかし、今回の分析では、術後死亡率や合併症率に執刀医の性別による有意な差はなく、女性も同様に手術スキル向上に成功していることがわかった。今後、手術トレーニングの機会や執刀数、昇進の機会などにおいて男女の平等が実現すれば、女性消化器外科医の技術はさらに向上すると思われる」と、述べている。

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