妊娠中の薬剤の内服症例の国内データを解析
国立成育医療研究センターは9月14日、第二世代非定型抗精神病薬(second-generation antipsychotics;SGAs)の妊娠中の使用に関する安全性について国内のデータを解析し、SGAsを使用しても先天異常の発生率を上昇させないことが示されたと発表した。この研究は、同センター「妊娠と薬情報センター」の八鍬奈穂薬剤師、村島温子センター長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Clinical Psychiatry」に掲載されている。
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生殖年齢女性のSGAsの使用は世界的に増加しており、妊娠中の使用の安全性評価は喫緊の課題となっている。今回研究グループは、同センターへの相談例をもとにした妊娠中の薬剤の内服症例のデータベースを用いて、SGAsを妊娠初期に服用した妊婦から出生した子ども351例と、SGAsを妊娠中に服用していない妊婦から出生した子ども3,899例で、先天異常の発生率を比較した。
先天異常発生率、SGAs使用有で0.9%、使用無で1.8%
その結果、SGAsを使用した妊婦、SGAsを妊娠中に服用していない妊婦から出生した子どもの先天異常発生率はそれぞれ0.9%、1.8%であり、有意な差は認められなかった。
妊娠中のSGAsの安全性情報として対照群と比較を行った日本で初めての観察研究だ。海外の研究では、妊娠初期のSGAsの使用は先天異常の発生率の上昇とは関連しないという結果が複数出ている。安全性評価には異なる情報源や異なる研究デザインを用いて行われた複数の研究を総合的に判断することが求められる。よって、研究成果は、SGAsの妊娠中使用の安全性評価において、日本のみならず世界的にも大きな貢献といえる。また、妊娠中もSGAsの使用が必要な女性にとって、使用を検討する際の安全性情報の1つとして重要な情報源となる。
「妊娠中の薬剤曝露症例のデータを前向きに調査し解析を行う「妊娠と薬情報センター」の取り組みや、妊娠中の薬剤使用の安全性情報の必要性が評価されており、今後も取り組みによるさらなる成果が期待される」と、研究グループは述べている。
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・成育医療研究センター プレスリリース