高齢化以外にも、サルコペニア発症の危険因子を多く有する透析患者
兵庫医科大学は9月8日、筋タンパク質の代謝産物である血清クレアチニン濃度が血液透析患者におけるサルコペニアのスクリーニングに有用であることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医療科学研究科病態運動学分野(内部障害)の垣田大輔大学院生、松沢良太講師、玉木彰教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle」に掲載されている。
日本において、血液透析療法を必要とする末期腎不全患者は年々増加している。透析患者の高齢化率に着目してみると、2018年末の国内の透析人口の平均年齢は68.7歳と高く、60歳以上が78.1%を占めている状況である。透析患者はこうした加齢以外にも、慢性的な低栄養の遷延、慢性炎症、インスリン抵抗性、代謝性アシドーシス、尿毒症、異化亢進/同化抵抗性、身体不活動/運動習慣の欠如、多疾患併存、生活習慣病の重度化、透析療法に伴うアミノ酸喪失、カルニチン欠乏および度重なる入院加療といったサルコペニア発症の危険因子を多く有することが知られている。サルコペニアとは筋量と筋力の進行性かつ全身性の減少に特徴づけられる疾患であり、近年では本格的な治療標的になっている。
サルコペニアの予防・是正を目的とした疾患管理を透析患者の日常診療の中で展開していくためには、簡便かつ信頼性の高いサルコペニアのスクリーニング指標を開発することが重要である。そこで、研究グループは筋タンパクの代謝産物である血液中のクレアチニン濃度に着目し、サルコペニアスクリーニングの有用性について検証を行った。
クレアチニンインデックス1mg/kg/day低下ごとに合併のオッズが1.27倍高く
研究では、東京都、神奈川県および兵庫県の3施設から集められた血液透析患者356人について、血清クレアチニン値から算出したクレアチニンインデックスのサルコペニア判別能について横断的に検証を行った。研究対象者のうち142人(39.9%)にサルコペニアを認めた。受信者動作特性曲線を用いた解析から、クレアチニンインデックスのサルコペニア判別における曲線下面積は0.77であり、中等度の判別能を有することが確認された。さらに患者背景因子で調整後のロジスティック回帰分析から、クレアチニンインデックス1mg/kg/day低下ごとにサルコペニア合併のオッズは1.27倍高くなることが明らかになった(odds ratio=1.27;95% confidence interval=1.06-1.53)。
クレアチニンインデックスは客観的で簡便に用いることが可能
今回研究グループは、血清クレアチニン値から算出するクレアチニンインデックスは客観的かつ臨床現場で簡便に用いることのできる有用なサルコペニアスクリーニング指標であることを示した。研究は小規模の観察研究であり、今後は症例数を増やした検討が必要であるという。また、「残腎機能のある患者において、クレアチニンインデックスがどの程度正確にサルコペニアを判別できるか否かについてはさらなる検証が必要」と、研究グループは述べている。
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・兵庫医科大学 研究業績